◇SH1537◇コンプライアンス経営とCSR経営の組織論的考察(32)組織風土改革を運動推進事務局員はどうとらえたか 岩倉秀雄(2017/12/08)

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コンプライアンス経営とCSR経営の組織論的考察(32)

―組織風土改革運動を運動推進事務局員はどうとらえたか―

経営倫理実践研究センターフェロー

岩 倉 秀 雄

 

 前回は、不祥事が発生した組織で、新会長が組織風土改革運動の本部長に就任し、運動推進事務局員任命式を行い、第1ステップの「事件を考える」のテーマに沿って全国的に職場討議を開始するとともに、積極的な工場開放や地域イベントへの参加により、運動がスムーズにスタートしたことを述べた。

 今回は、前回のつづきとして、実際に全国の現場で運動を推進した運動推進事務局員がこの運動をどのようにとらえたのかについて述べる。

 

【組織風土改革運動を運動推進事務局員はどうとらえたか】

 筆者は、職場討議の結果だけではなく、全国の運動推進事務局員の声を集約し運動ニュースに掲載した。これにより、事件を発生させた部門だけではなく、組織全体にこの運動を波及させ、認識を共有し参加意識を喚起するとともに、声の中に運動を推進する上で問題化しそうなものがあった場合には直ちに手を打つ意図があった。

 一般に、組織改革プロジェクトを推進する場合には、必ず、抵抗、混乱、対立等、革新を阻むものが発生するので、革新を推進する者は、早期に問題を発見しそれが重篤化する前に対策を講じなければならない。(これは、危機管理の要諦でもある)

 運動ニュースに寄せられた、運動推進事務局員の声は、下表の通りであった。

 

表.チャレンジ「新生・○○」運動推進事務局員の声
(チャレンジ「新生・○○」運動NEW No.1を基に、筆者がまとめた)

  1. ① 職員一人一人が、今回の事件を真摯に受け止め、組織のあるべき姿を模索しようという強い想いが十分にうかがえる。しかし、組織の再生には、もっと地に足の着いた「土」からの想いが必要ではないか。これを踏まえて、次のステップに進みたい。(本所、男性)
  1. ② 当初、大方の職員が外野からものを言う雰囲気があったが、組織の体質、社会との関係等について意見を交換し合ううちに、次第に新生への提言に変わりつつあり、真剣に自分の組織を見つめ直すきっかけになった。(本所、男性)
  1. ③ この運動のコア・メンバーになり、最初はオタオタしていましたが、何度かメンバー間の打ち合わせを重ねるうちに「よし、やるぞ」という気持ちになってきました。
    今まで、女性だけで話す機会や言いたい事を言う場もなかっただけに、これは良いきっかけになったと思います。(支所、女性)
  1. ④ この討議がその場で終わったならば、今までと何ら変わらない組織で終わってしまう。
    討議で出た意見を、絶対に無駄にしてはいけない。意見が、今後活かされる職場であって欲しい。(関係会社、男性)
  1. ⑤「今の管理職は無責任で勇気がない」という言葉が、今でも脳裏に焼き付いて離れない。
    何はさておき、自分自身の変革から始めようと思う。人は変えられなくても自分自身は変えられるのだから。(販売事業部、男性)
  1. ⑥ 最初は、運動推進事務局員に任命されてとても戸惑いましたが、職場討議に参加している職員一人一人が、真剣に今回の事件について意見をぶつけ合う場に接し、この運動が今後の組織にとって本当に大切な運動なんだと感じました。(販売事業部、男性)
  1. ⑦ 今回の職場討議は、不満をはっきりと表明する良い機会だった。今後は、日常業務の中でも意見を出しやすい環境を整え、意見が反映される組織に変えていく必要があると思う。(乳業工場、男性)
  1. ⑧ この運動でグループ討議を進めていく中で、事の重大さ、職員の気持ち、考え方の違い、組織への思い入れ等、非常に勉強になった。各部署での討議が組織再生の糧になるように希望する。(飼料工場、男性)

 以上のように、運動推進事務局員は運動を前向きにとらえた。

 牛乳不正表示事件の発生当初は、「事件は乳業部門の一部の工場が発生させた事件で、我々は被害者的な立場にあるのではないか」との見方をしていた他部門(購買・生産・指導部門等)は、この討議を通じて事の重大さを認識し、組織全体の在り方を改めて考える方向に向かった。また、乳業部門は、売上げ回復に奔走し通常の勤務時間内での討議に参加できなかったが、直接取引先と接しこの運動を起したことに対する取引先や消費者の反応を直に知り、運動の重要性を再認識し業務時間外でも極力職場討議に参加した。

 今回は、運動の中心メンバーである現場の運動推進事務局員の声や事件発生部門とは異なる部門の認識の変化を中心に述べた。

 一般に、組織不祥事が発生すると、不祥事発生部門と他部門とのあつれきが表面化し、(外部からはそう見えないが)組織全体が一体となって再生に向かいにくい。だが、この組織の場合には、組織風土改革運動の初期には職場討議を通して認識の共有化が進み、組織一丸となって再生に向かうエネルギーが生まれた。

 次回は、運動の第2ステップである「新生・○○を考える」について述べる。

 

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