◇SH1656◇債権法改正後の民法の未来8 債権者代位権(2) 髙尾慎一郎(2018/02/20)

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債権法改正後の民法の未来 8
債権者代位権(2)

--事実上の優先弁済--

梅田中央法律事務所

弁護士 髙 尾 慎一郎

Ⅲ 議論の経過

1 経過一覧

会議等 開催日等 資料
第5回 H22.3.9開催 部会資料7-2
第21回 H23.1.11開催 部会資料21
第25回 H23.3.8開催 部会資料25
第26回 H23.4.12開催 部会資料26
中間的な論点整理 H23.4.12決定 同補足説明 部会資料33-2(中間的な論点整理に寄せられた意見の概要(各論1))
第40回 H24.1.31開催 部会資料35
第41回 H24.2.14開催 部会資料35
第62回 H24.11.13開催 部会資料51
第65回 H25.12.18開催 部会資料54
第70回 H26.2.19開催 部会資料58
第71回 H26.2.26開催 部会資料60
中間試案 H25.2.26決定 同補足説明 部会資料71-3(寄せられた意見)
第82回 H26.1.14 部会資料73A

 

2 概要

 債権者代位権における事実上の優先弁済については、これを許容するのが確立された判例であったが、債務者の責任財産保全という制度趣旨に照らし、批判もあった。そこで、法制審開始当初から、債権者代位権制度存続の必要性とともに、債権回収機能(事実上の優先弁済)を否定することの可否及びその方法について検討されていた。

 事実上の優先弁済を否定することについては、簡易な債権回収方法を失わせる必要はないとの反対意見も強かったことから、中間的な論点整理までは、両論併記の上、「その見直しの要否について、更に検討してはどうか」とされていた。

 もっとも、第40回部会から(部会資料35)から、債権者の直接引渡請求権を肯定した上で、債権者の債務者に対する返還債務を受働債権として債務者に対する被保全債権との相殺を禁止するとの提案がなされ、中間試案においても、冒頭のとおり、債権者の直接引渡請求権を肯定した上で債権者による相殺を禁止する旨の試案が提示されるとともに、注記として、債権者の直接引渡請求権を否定することによって事実上の優先弁済機能を否定する案も記載された。

 しかしながら、中間試案に対するパブリックコメントにおいて複数の反対意見が寄せられたことから、債権者の直接引渡請求権を規定するものの、債権者による相殺は禁止しない、つまり、判例法理を維持することとなった。

 

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