◇SH1686◇社外取締役になる前に読む話(12)――会社の業務をより深く知るためにはどうしたら良いのか 渡邊 肇(2018/03/07)

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社外取締役になる前に読む話(12)

ーその職務と責任ー

潮見坂綜合法律事務所

弁護士 渡 邊   肇

 

XII 会社の業務をより深く知るためにはどうしたら良いのか

ワタナベさんの疑問その7

 取締役会において説得力のある意見を述べるためにも、会社の業務全般や、各取締役の業務執行行為全般について、もっと深く知る必要があると実感する。会社は、主要工場の視察や主力製品の機能等についてその概略の説明を受ける機会等を設定してくれるが、どうも隔靴掻痒の感がある。他の会社では、社外取締役に対してどのような機会を提供しているのだろうか。

 今以上のことを要請すると会社に迷惑をかけてしまうことはないのだろうか。

 

解説

 例えば、新規工場建設のための投資案件が取締役会の議案に上程されたとしよう。この場合、当該投資の要否、投資金額の妥当性の双方が決議の対象となる訳であるが、そのどちらについても、取締役として適切な判断を下すためには、当該工場で生産される予定の商品の現状での売上高等のデータのみならず、将来の売上予想等についても正確に理解しておくことが必要不可欠である。これらの情報は、取締役会における審議にあたり、審議に必要な限度で要約されて提供されるのが通常であるが(提供される情報量および事前の検討時間の重要性については先回までに解説した。)、そもそも判断に必要十分な情報が提供されているのか否かを判断するためにも、当該議案に関連する商品等の背景事実について十分に理解しておくことが必要不可欠であり、かかる理解なくして、議案に関して合理的な判断を下すことはできないというべきであろう。

 代表取締役および業務執行取締役として選任された取締役は、四半期に一度、取締役会において、業務執行の状況を報告することが会社法上要求されている(会社法363条)。社外取締役としては、このような、取締役会における業務報告を通じて、会社の各セグメントにつき、その業務全般および各取締役の業務執行行為の最新情報を入手できるのであるが、この業務報告は、社外取締役への情報提供を目的として行われるものではない。また、これにより提供される情報は、あくまでも直近四半期に行われた業務執行の報告であって、会社の各セグメントの業務全般または各取締役の業務執行行為全般が対象になるものでもない。そもそも社外取締役が入手できる会社業務全般に関する情報は、他の取締役に比して圧倒的に少ないことに鑑みれば、社外取締役に対しては、このほかにも、会社をより深く知るための別の機会が積極的に付与されるべきであると考える。

 この点、統計等の資料は持ち合わせていないが、筆者の知る限り、社外取締役を迎え入れた会社はどこでも、社外取締役に、会社の歴史、業務、その製品やサービス等々をより深く知ってもらうために、様々なイベントを新たに企画する一方、それ以外にも会社が日常的に行っているイベントへの参加を要請しているはずである。社外取締役は、通常例えば、以下のようなイベントへの参加を求められているように思われる。

  1.  •  支社・営業所や工場等の視察(海外子会社、海外工場等を含む)
  2.  •  全国事業所長会議のような、全社規模の会議への参加
  3.  •  証券アナリスト等に対する決算説明会への参加
  4.  •  代表取締役との定期会合や懇親会への参加

 しかしながら、仮に社外取締役が、ワタナベさんのように、与えられている機会だけでは会社の業務全般や、各取締役の業務執行の詳細等について十分な知識を得ることができないと思った場合は、会社に対して、もっと別の機会を企画するよう要請すべきであろう。原理原則に立ち戻れば、社外取締役の役割が、「独立した客観的立場から企業価値の向上に貢献する」ことである以上、会社の業務を深く知ることがその職務の遂行に不可欠であることは明らかだからである。

 例えば、会社の主要業務に関する社会的制約や公的規制につき、社外監査役も含めた社外役員全員に対し、定期的にブリーフィングを行うということもあり得るであろうし、やはり社外監査役を含む社外役員のみの会議(これについては別途解説する)主催で、取締役一人一人と定期的に会合を持ち、情報収集を行う機会を設けている会社もあるようである。どちらも、社外取締役が、各取締役が日頃のどのようなことを行っているのか、業務上の懸念点等は何処にあると認識しているのか、等々につき、有益な情報を入手する機会となり得る、優れた試みであると思料する。

 以上、社外取締役としては、仮に会社から提供される機会のみでは会社について深く知ることができないと判断する場合は、必要だと思われる情報を得るための追加の機会の提供を積極的に要請するべきである。会社にとっては、追加の労力と費用が発生することになるため、ある意味敬遠したい要請になることもあり得るが、社外取締役としての職務の遂行に必要なものである以上、会社としてこれを拒否する合意的な理由は存在しないだろうと思われる。

 

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