個人情報保護委、「個人情報の保護に関する法律についての
ガイドライン(案)」に関する意見募集
岩田合同法律事務所
弁護士 青 木 晋 治
個人情報保護委員会は、平成28年10月4日、「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編、外国にある第三者への提供編、第三者提供時の確認・記録義務編及び匿名加工情報編)(案)」(以下「本ガイドライン案」という。)を公表し、意見募集を行っている(意見提出期限は同11月2日まで)。
個人情報保護法(以下「法」という。)の改正法全面施行(平成29年春頃を予定)に伴い、同法に係る監督権限が個人情報保護委員会に一元化される。従前は、監督権限が各省庁に分散し、ガイドラインも省庁ごとのものが併存していたが、今後は、唯一の監督官庁となる個人情報保護委員会が、全ての分野に共通に適用されるガイドラインを定めることとなり、その案が公表されたものである。
本ガイドライン案のうち、「外国にある第三者への個人データの提供」「個人データの第三者提供時における確認・記録義務」「匿名加工情報」については、法改正により新たに導入された内容に即したものである。事業者における法の正しい理解や参照等の便宜を考慮し、以下の4つのガイドラインに分けて案が提示されている。
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例えば、③は、改正法により新設された第三者提供時の確認・記録義務(法第25条・第26条)に基づくものである。これは、平成26年に発生した民間企業における大規模漏えい事案を契機として、いわゆる名簿業者を介在し、違法に入手された個人データが社会に流通している実態が世間一般に明らかにされたことを受け、個人データの適正な第三者提供を確保するために設けられた規定であり、上記③の「第三者提供時の確認・記録義務編」は、法が定める事業者の義務のうち第三者提供における確認記録義務に関する部分に特化して分かりやすく包括的に示す観点から、通則ガイドラインとは別のガイドラインという形で提示されている。なお、この確認・記録義務により、正常な事業活動を行っている個人情報取扱事業者における過度な負担を懸念する声が多く上がっているところ、ガイドラインでは、事業者に対する過度な負担を回避するため、確認・記録義務の適切な運用の整理が示されており、その一環として、確認・記録義務の全体図も公表されており、参考となる。
今後、各省庁のガイドラインのうち個人情報保護法に関するものは、原則として個人情報保護委員会が定めるガイドラインに一元化されるが、一部の分野については、個人情報の性質及び利用方法並びに現行の規律の特殊性等を踏まえて、ガイドラインを基礎として、当該分野においてさらに必要となる別途の規律を定めることとされており、その分野の例として、医療関連、金融関連、情報通信関連が挙げられているところである。パブリックコメントを受けたガイドライン案の変更・具体例の追加があり得ることや、今後公表される各分野におけるガイラインについても注視する必要があり紹介する次第である。
以 上