◇SH1702◇消費者契約法の一部を改正する法律案が国会に提出される(2018/03/13)

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消費者契約法の一部を改正する法律案が国会に提出される

--取り消しうる不当な勧誘行為の追加、無効となる不当な契約条項の追加等--

 

 消費者契約法の一部を改正する法律案が3月2日に閣議決定の上、国会(衆議院)に提出された(閣法第31号)。

 消費者契約法については、平成28年改正の国会審議の際に、今後の検討課題について必要な措置を講ずる旨の附帯決議がなされており、それを受けた消費者委員会の答申(平成29年8月8日)、パブリック・コメントを経て、今般の改正となったものである。

 今回提出された改正法の概要と要綱は、次のとおりである。

 

1 消費者契約法の一部を改正する法律案の概要

(1) 取り消しうる不当な勧誘行為の追加等

  1. ① 社会生活上の経験不足の不当な利用
  2. ・ 不安をあおる告知
    例)就活中の学生に、その不安を知りつつ、「あなたは一生成功しない」と告げ、就職セミナーに勧誘
  3. ・ 恋愛感情等に乗じた人間関係の濫用
    例)消費者の恋愛感情を知りつつ、「契約してくれないと関係を続けない」と告げて勧誘
  4. ② 契約締結前に債務の内容を実施等
    例)注文を受ける前に、消費者が必要な寸法にさお竹を切断し、代金を請求
  5. ③ 不利益事実の不告知の要件緩和
    例)「日照良好」と説明しつつ、隣地にマンションが建つことを、故意に告げず、マンションを販売→故意要件に重過失を追加

(2) 無効となる不当な契約条項の追加等

  1. ① 消費者の後見等を理由とする解除条項
    例)「賃借人(消費者)が成年被後見人になった場合、直ちに、賃貸人(事業者)は契約を解除できる」
  2. ② 事業者が自分の責任を自ら決める条項
    例)「当社が過失のあることを認めた場合に限り、当社は損害賠償責任を負う」

(3) 事業者の努力義務の明示

  1. ① 条項の作成
    解釈に疑義が生じない明確なもので平易なものになるよう配慮
  2. ② 情報の提供
    個々の消費者の知識および経験を考慮した上で必要な情報を提供

(4) 施行期日

 公布日から起算して1年を経過した日。


2 消費者契約法の一部を改正する法律案要綱

 消費者契約に関する消費者と事業者との間の交渉力等の格差に鑑み、消費者の利益の擁護を図るため、事業者の行為により消費者が困惑した場合について契約の申込み又はその承諾の意思表示を取り消すことができる類型を追加する等の措置を講ずることとするため、消費者契約法の一部を次のように改正することとする。

第一 事業者の努力義務に関する改正

一 第三条第一項の規定(事業者の努力)において、事業者は、消費者契約の内容が、その解釈について疑義が生じない明確なもので、かつ、消費者にとって平易なものになるよう配慮するよう努めなければならないものとすること。

二 第三条第一項の規定(事業者の努力)において、事業者は、物品、権利、役務その他の消費者契約の目的となるものの性質に応じ、個々の消費者の知識及び経験を考慮した上で、消費者契約の内容についての必要な情報を提供するよう努めなければならないものとすること。(第三条第一項関係)

第二 不利益事実の不告知に係る要件の改正

 第四条第二項の規定(不利益事実の不告知)において、故意に告げなかったこととされている要件を、故意又は重大な過失によって告げなかったこととすること。(第四条第二項関係)

第三 困惑類型の追加

 第四条第三項の規定において掲げる行為(当該行為によって消費者が困惑して意思表示をしたときは取消しが認められることとなる行為)として、次に掲げる行為を追加するものとすること。

一 当該消費者が、社会生活上の経験が乏しいことから、社会生活上の重要な事項又は身体の特徴若しくは状況に関する重要な事項に対する願望の実現に過大な不安を抱いていることを知りながら、その不安をあおり、正当な理由がある場合でないのに、物品、権利、役務その他の当該消費者契約の目的となるものが当該願望を実現するために必要である旨を告げること。

二 当該消費者が、社会生活上の経験が乏しいことから、当該消費者契約の締結について勧誘を行う者に対して恋愛感情その他の好意の感情を抱き、かつ、当該勧誘を行う者も当該消費者に対して同様の感情を抱いているものと誤信していることを知りながら、これに乗じ、当該消費者契約を締結しなけれれば当該勧誘を行う者との関係が破綻することになる旨を告げること。

三 当該消費者が消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をする前に、当該消費者契約により負うこととなる義務の内容の全部又は一部を実施し、その実施前の原状の回復を著しく困難にすること。

四 三を除くほか、当該消費者が消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をする前に、当該事業者が当該消費者契約の締結を目指した事業活動を実施した場合において、正当な理由がある場合でないのに、当該事業活動が当該消費者のために特に実施したものである旨及び当該事業活動の実施により生じた損失の補償を請求する旨を告げること。(第四条第三項第三号から第六号まで関係)

第四 無効とする消費者契約の条項の類型の追加

一 第八条の規定において、無効とする条項(事業者の損害賠償責任を免除する条項)に、事業者にその責任の有無及び責任の限度を決定する権限を付与する条項を追加するものとすること。(第八条第一項関係)

二 第八条の二の規定において、無効とする条項(消費者の解除権を放棄させる条項)に、事業者に消費者の解除権の有無を決定する権限を付与する条項を追加するものとすること。(第八条の二関係)

三 無効とする消費者契約の条項として、事業者に対し、消費者が後見開始、保佐開始又は補助開始の審判を受けたことのみを理由とする解除権を付与する消費者契約(消費者が事業者に対し物品、権利、役務その他の消費者契約の目的となるものを提供することとされているものを除く。)の条項を追加するものとすること。(第八条の三関係)

第五 附則

一 この法律は、公布の日から起算して一年を経過した日から施行するものとすること。(附則第一条関係)

二 この法律の施行に関し、所要の経過措置を定めるとともに、関係法律について所要の改正を行うこと。(附則第二条から第五条まで関係)

 

 

  1. 消費者庁、消費者契約法の一部を改正する法律案(3月2日国会提出)
    http://www.caa.go.jp/soshiki/houan/
  2. ○ 概要
    http://www.caa.go.jp/soshiki/houan/pdf/houan_180302_0001.pdf
  3. ○ 要綱
    http://www.caa.go.jp/soshiki/houan/pdf/houan_180302_0002.pdf
  4. ○ 法律案・理由
    http://www.caa.go.jp/soshiki/houan/pdf/houan_180302_0003.pdf
  5. ○ 新旧対照条文
    http://www.caa.go.jp/soshiki/houan/pdf/houan_180302_0004.pdf
  6. ○ 参照条文
    http://www.caa.go.jp/soshiki/houan/pdf/houan_180302_0005.pdf
     
  7. 参考
    ◇SH1365◇消費者庁、消費者契約法の見直しに関する意見募集を開始(2017/08/28)
    https://www.shojihomu-portal.jp/article?articleId=4313220


 

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