◇SH1719◇債権法改正後の民法の未来16 債権譲渡の第三者対抗要件の見直し(2) 德田 琢(2018/03/22)

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債権法改正後の民法の未来 16
債権譲渡の第三者対抗要件(2)

德田法律事務所

弁護士 德 田   琢

 

Ⅲ 議論の経過

(一) 経過一覧

 法制審議会では、下記一覧表記載のとおり議論がなされた。

会議等 開催日等 資料
第7回 H22.4.13開催
第1読会
部会資料9-1、9-2(詳細版)  
第22回 H23.1.25開催
論点整理
部会資料22  
第25回 H23.3.8開催
論点整理
部会資料25
中間的な論点整理 H23.4.12決定 同補足説明
部会資料33-3(中間的な論点整理に寄せられた意見の概要(各論2))
第45回 H24.4.17開催
第2読会
部会資料37  
第63回 H24.11.27開催 部会資料52
第66回 H25.1.15開催
中間試案
部会資料55  
第70回 H25.2.19開催
中間試案
部会資料58
中間試案 H25.2.26決定 中間試案(概要付き) 同補足説明 部会資料71-4(中間試案に対して寄せられた意見の概要(各論3))
第74回 H25.7.16開催
第3読会
部会資料63 部会参考資料11(債権譲渡の対抗要件制度に関する実態調査の結果報告) 「債権譲渡の対抗要件制度等に関する実務運用及び債権譲渡登記制度等の在り方についての調査研究報告書」 山野目章夫幹事「債権譲渡の対抗要件に関する見直しの方向について(第74回会議においてした発言の趣旨の補足説明)」
第83回 H26.2.4開催
第3読会
部会資料74B 経済産業省経済産業政策局産業資金課「債権譲渡の対抗要件制度について」
第89回 H26.5.27開催
第3読会
部会資料78B
第93回 H26.7.8開催
第3読会
部会資料81-3  

 

(二) 概要

 債権譲渡の第三者対抗要件制度を見直す具体案としては、①債務者をインフォメーション・センターとするという現行制度の理念を改めるとともに、民法と特例法の二元的な第三者対抗要件制度の解消を図る観点から、登記制度を利用することができる範囲を拡張するとともに、その範囲における債権譲渡の第三者対抗要件は、登記に一元化する案、②債務者をインフォメーション・センターとするという現行制度の理念は改めるものの、二元的な第三者対抗要件制度については現状を維持するものとして、債務者をインフォメーション・センターとはしない新たな第三者対抗要件制度(例えば、旧法上の確定日付のある通知又は承諾に代えて、確定日付のある譲渡契約書を債権譲渡の第三者対抗要件とする制度)を設ける案などが提言された。[1]

 しかし、登記一元化案については、中間試案において、債権の内容が非個性的であり、債権を特定した上でその内容を登記するという登記制度に馴染み易い「金銭債権」をその範囲とする旨の提案が具体的になされたが、当初から、①旧法上の対抗要件を具備する場合に比して、登記に要する費用の方が高く、実務的な負担が増える、②債権譲渡登記に関する事務を行う登記所が限られており、利便性に問題がある、[2]③実務的に受け入れ可能な登記制度を近い将来に構築することについての実現可能性が疑問である、④債務者をインフォメーション・センターとする旧法の制度の下で特に不都合が生じていないという反対意見が根強く呈されていた。[3]

 また、新たな第三者対抗要件制度を設ける案についても、中間試案において、金銭債権以外の債権の第三者対抗要件を、確定日付が付された譲渡契約書その他の譲渡の事実を証する書面とする旨の提案がなされたが、やはり当初から、債務者をインフォメーション・センターとする旧法の制度よりも公示性が劣るという懸念が呈されていた。[4]

 一方で、仮に、債務者をインフォメーション・センターとする第三者対抗要件制度を維持するとしても、債務者の承諾には、上記のとおり様々な問題があるとして、中間試案において、債務者の承諾を第三者対抗要件から削る案も提言された。

 しかし、①譲渡禁止特約付債権を譲渡する場合における譲渡の承諾や、債権譲渡とともに契約上の地位を移転する場合における契約の相手方の承諾を兼ねることができること、②一括決済システムのように、複数の譲渡人が同一の債務者に対して有する債権を一括して特定の譲受人に譲渡する場合には、債務者の承諾によって初めて、一括して対抗要件を具備することができること等、債務者の承諾に特有の利点があるとして、やはり反対意見が呈された。[5]

 以上のほか、最終的には、譲渡人又はその指定する者(例えば、債務者)が、確定日時(郵便認証司又は公証人が証書を認証した日時を付した場合におけるその日時をいう。)を付した債権譲渡にかかる証書を作成し、当該作成を債務者に通知することを第三者対抗要件とする案や、[6]法人を譲渡人とする将来債権の譲渡について、第三者対抗要件を登記に一元化する案なども検討の俎上に上った。[7]

 

Ⅳ 立法が見送られた理由

 結局、合意形成が困難であると考えられたことから、将来債権譲渡の第三者対抗要件を明文化する点を除き、旧法における債権譲渡の第三者対抗要件制度を維持することとなった。[8]



[1] 部会資料9-2

[2] 中間的な論点整理の補足説明

[3] 部会資料52

[4] 部会資料9-2

[5] 部会資料52

[7] 経済産業省経済産業政策局産業資金課「債権譲渡の対抗要件制度について」

[8] 部会資料81-3

 

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