SH4400 意外に深い公益通報者保護法~条文だけではわからない、見落としがちな運用上の留意点~ 第24回 公益通報者の保護(6) 金山貴昭(2023/04/10)

公益通報・腐敗防止・コンプライアンス

意外に深い公益通報者保護法
~条文だけではわからない、見落としがちな運用上の留意点~

第24回 公益通報者の保護(6)

森・濱田松本法律事務所

弁護士 金 山 貴 昭

 

 

Q 保護される公益通報者の行為

 行政機関やその他の事業者外部に公益通報するために、従業員が法令や内部規則に違反して、法令違反行為を証明する資料等を持ち出した場合、公益通報者保護法により懲戒処分をすることは禁止されますか。

 

A 【ポイント】

行政機関やその他事業者外部に対し公益通報する場合には、通報対象者が犯罪行為等を行ったと「信ずるに足りる相当の理由がある」ことが、公益通報者が保護されるための要件の一つとなります。通報者としては、行政機関やその他事業者外部に公益通報する際に、何らの証拠資料もなく公益通報を行うことが困難な場合が多く、また「信じるに足りる相当の理由がある」ことを基礎づける資料も必要となるため、公益通報のために必要な証拠書類を持ち出す行為は、公益通報に付随する行為として、公益通報者保護法による保護の対象になり得ると考えられます。

 

【解説】

1 公益通報者保護法による保護される行為

 公益通報者保護法では、公益通報をしたことを理由として、公益通報者に対し解雇その他不利益な取扱い等をすることを禁止しています(法3条ないし7条)。他方で、仮に公益通報者であったとしても、公益通報者が法令違反行為を行っていれば、(公益通報をしたことを理由としてではなく)当該法令違反行為を理由として、懲戒処分等の適切な措置を講じることは、禁止されていません[1]。本設例のように、公益通報を行うために社内資料を持出すことは、通報行為そのものではないと考えられるため、当該資料の持出しが事業者の内部規程に違反している場合に、当該資料の持出し行為が内部規程に違反しているとして懲戒処分とすることが、公益通報者保護法上禁止されている不利益取扱いに該当するかが問題となります。

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(かなやま・たかあき)

弁護士・テキサス州弁護士。2008年東京大学法学部卒業、2010年東京大学法科大学院卒業、2019年テキサス大学オースティン校ロースクール(L.L.M.)修了。2011年弁護士登録(第二東京弁護士会)、2019年テキサス州弁護士会登録。2021年消費者庁制度課(公益通報制度担当)、同参事官(公益通報・協働担当)出向。
消費者庁出向時には、改正公益通報者保護法の指針策定、同法の逐条解説の執筆等に担当官として従事。危機管理案件の経験が豊富で、自動車関連、動物薬関連、食品関連、公共交通機関、一般社団法人等の幅広い業種の危機管理案件を担当。

 

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