SH4438 ゲーム市場でのEU企業結合審査の背景――デジタル市場に関連する審査の今後 亀岡悦子(2023/05/15)

取引法務競争法(独禁法)・下請法

ゲーム市場でのEU企業結合審査の背景
――デジタル市場に関連する審査の今後――

Atsumi & Sakai Europa

弁護士(ニューヨーク州弁護士会会員、ブリュッセル弁護士会準会員)
亀 岡 悦 子

 

 ゲーム市場に関する企業結合規制が話題になっている。クラウドゲームを含むゲーム市場では、既に複数の企業がEU競争法審査、特に支配的地位濫用審査などのアンチトラスト審査の対象となっている。クラウドゲーム市場は、従来の家庭用ゲーム機に比較すると現在のところ小規模であるが、将来の急速な拡大が期待されている。マイクロソフト社のゲーム大手アクティビジョン・ブリザードの大型買収案は、米国、ブラジル、南アフリカ、ウクライナ、チリ、サウジアラビア、セルビアなどの競争当局によって審査されており、日本の公取委は、今年3月28日に取引を承認した。買収案が発表されて既に1年以上が経過しているが、全ての競争当局が承認しているのではなく、昨年9月末に届出を受けた欧州委員会競争総局(欧州委)は、現在、審査中である。今年3月1日に問題解消措置が欧州委に提出され、4月25日だった締切が延長され、現在、5月22日がEUでの審査の締切日となっている(事件番号 M.10646 Micorosft Corporation/Activision Blizzard, Inc)。取引は、ゲームコンソール販売市場におけるオーバーラップの分析などをカバーする。

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(かめおか・えつこ)

弁護士(米国ニューヨーク州弁護士会会員、ベルギー王国ブリュッセル弁護士会準会員)
慶応義塾大学法学部法律学科卒業、同大学法学研究科修士課程終了。同博士課程在籍中、パリ・ルボンヌ大学修士課程にてEU競争法を研究し、ニューヨーク大学ロースクールで法学修士号LL.M.を取得。欧州委員会競争総局で修習後、欧州大学院(ブルージュ)でEU競争法手続の研究。EU競争法における秘匿特権の研究で、ブラッセル自由大学から法学博士号を取得。フランス系、英国系法律事務所を経て、2001年からEU競争法弁護士としてブラッセルのバンバール・アンド・ベリス法律事務所に勤務。2022年、ジェラディン・パートナーズに入所してテクノロジー分野のEU競争法実務に携わった後、2023年から、渥美坂井法律事務所・欧州オフィスAtsumi & Sakai Europaパートナー。カルテル・支配的地位濫用審査での欧州委審査対応、企業結合届出、流通販売制度の設立、R&D・アライアンスなどの契約書の作成・見直し、知財ライセンス交渉などのEU競争法の全ての分野を扱い、コンプライアンスプログラムの作成やトレーニング、競争法違反に基づく損害賠償請求訴訟についても豊富な経験を有する。EU競争法の講演や著作も多い。

連絡先:Atsumi & Sakai Europa渥美坂井法律事務所 フランクフルト提携事務所
    Etsuko.Kameoka@aplaw.de

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