SH4542 欧州委員会によるスマートフォン・タブレットに関する修理可能スコア表示の義務付け等を含むエネルギーラベリング規則について 井上乾介/福山和貴(2023/7/13)

組織法務サステナビリティ

欧州委員会によるスマートフォン・タブレットに関する修理可能スコア表示の義務付け等を含むエネルギーラベリング規則について

アンダーソン・毛利・友常法律事務所 外国法共同事業

弁護士 井 上 乾 介

弁護士 福 山 和 貴

 

1 はじめに

 大量生産・大量消費型の経済社会活動は、大量廃棄型の社会を形成し、健全な物質循環を阻害するほか、気候変動問題、天然資源の枯渇、大規模な資源採取による生物多様性の破壊など様々な環境問題にも密接に関係している。資源・エネルギーの需要増大や廃棄物発生量の増加が世界全体で深刻化しており、一方通行型の経済社会活動から、持続可能な形で資源を利用する「循環経済」への移行を目指すことが世界の潮流となっている[1]

 

出典:「令和3年版 環境・循環型社会・生物多様性白書」第1部第2章第2節1 図2-2-1参照(環境省)

 

 欧州では、2023年6月16日、新たに、携帯電話やタブレットについて、より耐久性やエネルギー効率が高く、修理が容易で、消費者にとってサステイナブルな選択ができるように、新たな「エネルギーラベリング規則」(Energy Labelling Regulation)が欧州委員会で提案されたほか、新たな「エコデザイン規則」(Ecodesign Regulation)が欧州委員会で承認された(以下、「エネルギーラベリング規則」と「エコデザイン規則」を合わせて、「両規則」という)。

 両規則が施行されれば、2030年までに毎年、約14TWhの一次エネルギーを削減できることが見込まれる。これは、現在の製品が消費する一次エネルギー量の3分の1に相当する[2]

 両規則の制定は、携帯電話やタブレットを製造販売している事業者はもちろん、これらの製品を使用する消費者においても大きな影響を与えうるものであるため、本稿にて紹介する。

 

2 概要

⑴ 両規則制定の背景・意義

  両規則は、欧州委員会において2020年3月に採択された、新循環経済行動計画(new circular economy action plan(以下「CEAP」という。))[3]の一環である。

 CEAPは、欧州の持続可能な成長のための新たな政策アジェンダである、欧州グリーンディール(European Green Deal)[4]の中核の一つであり、EUが2050年までに温室効果ガスの排出ゼロを達成するための前提条件として位置づけられるものである[5]

 欧州グリーンディールが掲げる目標については以下の図を参照されたい。

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(いのうえ・けんすけ)

アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業 スペシャル・カウンセル。2004年一橋大学法学部卒業。2007年慶応義塾大学法科大学院卒業。2008年弁護士登録(東京弁護士会)。2016年カリフォルニア大学バークレー校・ロースクール(LLM)修了。2017年カリフォルニア州弁護士登録。著作権法をはじめとする知的財産法、個人情報保護法をはじめとする各国データ保護法を専門とする。

 

(ふくやま・かずき)

アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業アソシエイト。一橋大学法学部・一橋大学法科大学院卒業。2022年弁護士登録(第一東京弁護士会)。

 

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