SH4552 欧州委、標準必須特許等に関する規則案を提案 後藤未来/市川祐輔(2023/07/20)

取引法務特許・商標・意匠・著作権

欧州委、標準必須特許等に関する規則案を提案

アンダーソン・毛利・友常法律事務所*

弁護士 後 藤 未 来

弁理士 市 川 祐 輔

 

1 はじめに

 欧州委員会(European Commission)は、2023年4月27日、標準必須特許(Standard Essential Patent、 以下「SEP」という。)に関する規則案(以下「本SEP規則案」という。)、および危機的状況における特許の連合強制実施権に関する規則案(以下「本強制実施権規則案」という。)を提案した[1]。当該提案は、2023年6月1日から開始した統一特許制度を補完するものとされる。なお、これらの規則案が実際に発効するためには、欧州議会や理事会において審議・採択等の手続を経る必要がある。

 SEPは、通信技術(たとえば、LTE、5G、Wi-Fi、Bluetooth、NEF)やデータ圧縮等の技術規格を実施するのに必須の特許である。規格技術を実装する場合にSEPを実施することになる実装者と、SEPの権利者の間では、かねてよりライセンス条件等を巡る紛争が頻発している。本SEP規則案[2]は、SEPの権利者と実装者の間におけるSEPに関する情報の透明性の向上や効率的な交渉の促進等を目的とし、以下の内容を含むものである。

 

① 各規格に関するSEPのアグリゲートロイヤリティの公表
② EUIPO(欧州連合知的財産庁)によって管理されるデータベースへのSEP等の登録
③ SEPの必須性の検証と結果の公表
④ FRAND条件に関する調停手続

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(ごとう・みき)

アンダーソン・毛利・友常法律事務所パートナー、弁護士・ニューヨーク州弁護士。理学・工学のバックグラウンドを有し、知的財産や各種テクノロジー(IT、データ、エレクトロニクス、ヘルスケア等)、ゲーム等のエンタテインメントに関わる案件を幅広く取り扱っている。ALB Asia Super 50 TMT Lawyers(2021、2022)、Chambers Global(IP分野)ほか選出多数。AIPPIトレードシークレット常設委員会副議長、日本ライセンス協会理事。

 

(いちかわ・ゆうすけ)

アンダーソン・毛利・友常法律事務所 弁理士。2007年早稲田大学(工学博士)。2008年弁理士登録。2016年カリフォルニア州弁護士登録。ディープラーニング、通信ネットワーク、ブロックチェーンなど主にIT関連の技術分野と特許法をはじめとする知的財産法を専門とする。

 

<事務所概要>
アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業は、日本における本格的国際法律事務所の草分け的存在からスタートして現在に至る、総合法律事務所である。コーポレート・M&A、ファイナンス、キャピタル・マーケッツ、知的財産、労働、紛争解決、事業再生等、企業活動に関連するあらゆる分野に関して、豊富な実績を有する数多くの専門家を擁している。国内では東京、大阪、名古屋に拠点を有し、海外では北京、上海、香港、シンガポール、ホーチミン、バンコク、ジャカルタ等のアジア諸国に拠点を有する。

<連絡先>
〒100-8136 東京都千代田区大手町1-1-1 大手町パークビルディング

 


*「アンダーソン・毛利・友常法律事務所」は、アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業および弁護士法人アンダーソン・毛利・友常法律事務所を含むグループの総称として使用

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