SH3623 消費者庁、「公益通報者保護法に基づく指針等に関する検討会 報告書」を公表 池田彩穂里/高亮(2021/05/18)

組織法務公益通報・腐敗防止・コンプライアンス

消費者庁、「公益通報者保護法に基づく指針等に関する検討会 報告書」を公表

アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業

弁護士 池 田 彩穂里

弁護士 高     亮

 

 2020年6月12日に成立し公布された改正公益通報者保護法(令和2年法律51号、同日から2年以内の政令に定める日に施行予定)では、事業者に対し、公益通報に適切に対応するために必要な体制の整備その他の必要な措置をとること(改正法11条2項)、これらの必要な措置をとる業務に従事する者(公益通報対応業務従事者)を定めること(改正法11条1項)が義務付けられた(なお、常時勤務する労働者数が300名以下の事業者については、改正法11条3項により努力義務とされている。)。

 上記の改正法11条1項および2項に基づき事業者がとるべき措置については、追って内閣総理大臣が指針を定めるものとされている(改正法11条4項)ところ、消費者庁は、2020年10月19日から2021年3月22日までの間に、計5回の検討会を開催し[1]、2021年4月21日、検討会による報告書[2]が公表された。本項では、本報告書に記載された指針案のポイントおよびその背景となる考え方について、簡単に紹介する。なお、指針案の全文や解説等は報告書に掲載されているため、適宜参照されたい。

 

1 本報告書に記載された指針案および背景となる考え方

 本報告書に記載された、指針案に定めるべき事項および背景となる考え方の主な内容は、以下のとおりである。 

⑴ 内部公益通報受付窓口の設置等
(指針案のポイント)

部門横断的な窓口の設置等

事業者は、内部公益通報受付窓口を設置し、当該窓口に寄せられる内部公益通報を受け、調査をし、是正に必要な措置をとる部署および責任者を明確に定めなければならない。

組織の長その他幹部[3]からの独立性を確保する措置

事業者は、内部公益通報受付窓口において受け付ける内部公益通報にかかる公益通報対応業務に関して、組織の長その他幹部に関係する事案については、これらの者からの独立性を確保する措置をとらなければならない。

背景となる考え方)
 通報対象事実に関する情報を早期にかつ円滑に把握するためには、内部公益通報を部門横断的に受け付ける窓口(以下「内部公益通報受付窓口」という。)を設けることに加え、内部公益通報を受け、調査をし、その是正に必要な措置をとる業務(以下「公益通報対応業務」という。)を、責任感を持って実効的に行うべく、責任の所在を明確にすることもきわめて重要である。その意味で、内部公益通報受付窓口と、受け付けた後の公益通報対応業務を行う部署および責任者を明確に定める必要がある。

 また、組織の長その他幹部が影響力を行使することで公益通報対応業務が適切に行われない事態を防ぐ必要があること等を考慮すれば、上記の窓口や担当部署そして責任者は、これらの者から独立したものとする必要がある。 

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(いけだ・さおり)

アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業パートナー。2005年東京大学法学部卒業。2007年東京大学法科大学院卒業。2008年弁護士登録(所属弁護士会)。2015年UCLA・ロースクール(LLM)修了。2017年ニューヨーク州弁護士登録。主な業務分野はコーポレート、労働法及びライフサイエンス。

 

(こう・りょう)

アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業アソシエイト。2008年早稲田大学法学部卒業。2011年京都大学法科大学院卒業。2012年弁護士登録(第一東京弁護士会)。同年高井・岡芹法律事務所入所。2020年当事務所入所。

アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業 https://www.amt-law.com/

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