SH4586 欧州データ保護会議、GDPRにおける日本の十分性認定に係る第1回レビューに関する声明を採択 後藤未来/藤田 琴(2023/08/09)

取引法務個人情報保護法

欧州データ保護会議、GDPRにおける日本の十分性認定に係る
1回レビューに関する声明を採択

アンダーソン・毛利・友常法律事務所*

弁護士 後 藤 未 来

弁護士 藤 田   琴

1 はじめに

 欧州連合(以下「EU」)の「一般データ保護規則(General Data Protection Regulation)」(以下「GDPR」)の下では、個人データを欧州経済領域(EEA)の域外に移転するためにはGDPR所定の条件に従うことが要求される(GPDR44条)。この規制は、日本を含めEU域外の事業者にも適用され得るため、日本の事業者であってもEEA域内の個人データを取り扱う場合には注意が必要となる。

 GDPRの下で個人データの域外移転が許容される条件としては、①「十分性認定」を受けた国等に対する移転、②標準契約条項(以下「SCC」)の締結、③拘束的企業準則の締結等がある(GDPR45条以下)。日本に関しては、2019年1月に「十分性認定」がなされており、EEAから日本の民間事業者への個人データの移転は、SCCの締結等の措置を要することなく可能である。

 かかる日本の「十分性認定」が引き続き事実面・法制面で正当化されるかを検証するために、欧州委員会は定期的なレビューを実施して欧州議会に報告することとされている。第1回レビューにかかる報告書は、2023年4月3日に発行された[1]

 今般、この第1回レビューに関して、EDPB(欧州データ保護会議)は、2023年7月19日付で声明を採択した[2]。本声明における主な指摘事項等は次のとおりである。

 

①日本の個人情報保護法制の改正に対する積極的評価 2019年の十分性認定以降に行われた法改正(個人データの利用停止・消去等の請求権の拡充、漏洩等の場合の報告義務等)について、積極的な評価を表明
②「仮名加工情報」に関する指摘 日本の個人情報保護法における「仮名加工情報」の導入に関して、取扱事業者による一部の義務の免除等に触れ、欧州委員会による実際の運用の監視等を歓迎
③個人データの再移転に関する指摘 EEAから日本に移転された個人データの再移転に関して、個人情報保護委員会のガイドラインにおける明確化の重要性等を指摘

 

 以下では、日本の十分性認定に関する第1回レビューの経過等を振り返りつつ、上記EDPBの声明の内容を概観する。

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(ごとう・みき)

アンダーソン・毛利・友常法律事務所パートナー、弁護士・ニューヨーク州弁護士。理学・工学のバックグラウンドを有し、知的財産や各種テクノロジー(IT、データ、エレクトロニクス、ヘルスケア等)、ゲーム等のエンタテインメントに関わる案件を幅広く取り扱っている。ALB Asia Super 50 TMT Lawyers(2021、2022)、Chambers Global(IP分野)ほか選出多数。AIPPIトレードシークレット常設委員会副議長、日本ライセンス協会理事。

 

(ふじた・こと)

アンダーソン・毛利・友常法律事務所アソシエイト。2019年京都大学法学部中退(3年次修了後、法科大学院へ飛び級進学)。2021年京都大学法科大学院卒業。2022年弁護士登録(第2東京弁護士会所属)。

 

アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業 https://www.amt-law.com/

<事務所概要>
アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業は、日本における本格的国際法律事務所の草分け的存在からスタートして現在に至る、総合法律事務所である。コーポレート・M&A、ファイナンス、キャピタル・マーケッツ、知的財産、労働、紛争解決、事業再生等、企業活動に関連するあらゆる分野に関して、豊富な実績を有する数多くの専門家を擁している。国内では東京、大阪、名古屋に拠点を有し、海外では北京、上海、香港、シンガポール、ホーチミン、バンコク、ジャカルタ等のアジア諸国に拠点を有する。

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* 「アンダーソン・毛利・友常法律事務所」は、アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業および弁護士法人アンダーソン・毛利・友常法律事務所を含むグループの総称として使用

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