SH4595 欧州委員会、欧州サステナビリティ報告基準(ESRS)を採択 清水亘(2023/08/22)

組織法務サステナビリティ

欧州委員会、欧州サステナビリティ報告基準(ESRS)を採択

アンダーソン・毛利・友常法律事務所*

弁護士 清 水  亘

 

1 ESRSの採択

 欧州委員会(European Commission)は、2023年7月31日、欧州サステナビリティ報告基準(European Sustainability Reporting Standards:ESRS)を採択した[1]。ESRSは、企業サステナビリティ報告指令(Corporate Sustainability Reporting Directive:CSRD[2])の対象となるすべての企業が用いることが想定されている。欧州委員会は、ESRSをサステナブルなEU経済への移行に向けた新たな一歩と位置付けている。

 ESRSは、気候変動、生物多様性、人権など、環境Environment、社会Social、ガバナンスGovernanceに関するあらゆる問題をカバーしており、投資先企業のサステナビリティへの影響を投資家が理解するために役立つ情報が企業から提供されることを期待している。ESRSは、EU基準とグローバル・スタンダードとの間での相互運用性を確保し、企業による二重報告の負担を避けることを意図して、国際サステナビリティ基準審議会(the International Sustainability Standards Board:ISSB[3])およびグローバル・レポーティング・イニシアティブ(the Global Reporting Initiative:GRI[4])との議論にも配慮している。

 開示義務は、企業規模等に応じて、段階的に導入される予定である[5]

 

2 ESRS採択の意義

 EU法は、欧州グリーン・ディール[6]の一環として、すべての大企業とすべての上場企業(上場零細企業を除く)に対して、社会問題・環境問題から生じる財務リスクとビジネスの機会、および、企業活動が人々や環境に与える影響に関する情報を開示することを法的に義務付けている。もっとも、現時点での企業によるサステナビリティ情報の開示は十分ではないとされている。

 そこで、欧州委員会は、企業がサステナビリティに関する法的報告義務を果たすために共通の基準に従うことを定めたCSRDに沿って、企業がサステナビリティ関するパフォーマンスを効率的に伝達・管理し、サステナブル・ファイナンスへのアクセスを向上させるための共通の基準として、ESRSを採択した。ESRSの草案は、EFRAG(European Financial Reporting Advisory Group)が作成した。

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(しみず・わたる)

アンダーソン・毛利・友常法律事務所パートナー。東京大学法学部卒業。2005年弁護士登録(第一東京弁護士会。2012年愛知県弁護士会に登録替え)。主な取扱い分野は、知的財産法、テクノロジー法。

 

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