内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)、「サイバーセキュリティ関連法令Q&AハンドブックVer2.0」を公開
アンダーソン・毛利・友常法律事務所*
弁護士・カリフォルニア州弁護士 井 上 乾 介
弁護士 佐々木 公 樹
1 はじめに
サイバー攻撃による被害が深刻化している今日においては、各企業がそれぞれサイバーセキュリティを整備して、企業の資産や従業員、顧客の情報等を保護していくことが不可欠となっている。もっとも、サイバーセキュリティと一言で言っても、関係してくる法令やガイドライン等は数多くあるうえ、それぞれの法令等は随時改正等を重ねていくため、法務の面から対応していくことは必ずしも容易ではない。
そのような状況の中、内閣官房の「内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)」(以下「NISC」という。)は、2020年3月に、企業向けの「サイバーセキュリティ関係法令Q&Aハンドブック」(以下「本ハンドブック」という。)を公表した[1][2]。本ハンドブックは、サイバーセキュリティに関連する法令が広範に記載されており、主に企業の経営層や法務部門等が読み手として想定されたものとなっている。そして、その後の社会情勢の変化や法令の改正等を受けて、NISCは2023年9月に、本ハンドブックの改訂版として「サイバーセキュリティ関係法令Q&AハンドブックVer2.0」[3]を公表した。
本稿では、本ハンドブックの概要を説明したうえで、Ver2.0での改訂事項にも触れ、最後に実務への示唆について述べる。
2 本ハンドブックの概要
本ハンドブックは、企業がサイバーセキュリティ対策を実施する際やインシデント対応の際などに参照すべき法制度等について幅広くまとめられたものとなっており、法令だけでなく、各種ガイドラインや国際規格等にも触れられている。
本ハンドブックで取り上げられている主なトピックは下記の14項目である[4]。
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(いのうえ・けんすけ)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所 スペシャル・カウンセル。2004年一橋大学法学部卒業。2007年慶応義塾大学法科大学院卒業。2008年弁護士登録(東京弁護士会)。2016年カリフォルニア大学バークレー校・ロースクール(LLM)修了。2017年カリフォルニア州弁護士登録。著作権法をはじめとする知的財産法、個人情報保護法をはじめとする各国データ保護法を専門とする。
(ささき・こうき)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所アソシエイト。2021年早稲田大学法学部卒業。2022年弁護士登録(第二東京弁護士会)。
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