SH4774 「九州・長崎特定複合観光施設区域整備計画」の審査結果の分析(1) 渡邉雅之(2024/01/19)

そのほか

「九州・長崎特定複合観光施設区域整備計画」の審査結果の分析(1)

特定複合観光施設区域整備推進会議委員
弁護士法人三宅法律事務所
弁護士 渡 邉 雅 之

 

はじめに

 令和5年(2023年)12月27日、特定複合観光施設区域整備法(以下「IR整備法」という。)9条1項に基づき、令和4年4月に長崎県およびKYUSHUリゾーツジャパン株式会社から、認定申請のあった特定複合観光施設区域整備計画(「九州・長崎特定複合観光施設区域整備計画」(以下「長崎県IR整備計画」という。)[1])について、国土交通大臣が同法9条11項に基づく認定を行わないこととしたとの公表(「九州・長崎特定複合観光施設区域整備計画について」[2])が観光庁からなされた。

 これは、国土交通大臣が設置した外部有識者からなる審査委員会(特定複合観光施設区域整備計画審査委員会)において、同計画が、特定複合観光施設区域の整備のための基本的な方針(令和2年12 月18日特定複合観光施設区域整備推進本部決定、以下「基本方針」という。)に従い確認を行った結果、「要求基準に適合しないことから基本方針に則り認定を行わないとすることが相当」との審査委員会の見解が示されたことを受けたことによるものである。

 本稿では、「『九州・長崎特定複合観光施設区域整備計画』に関する特定複合観光施設区域整備計画審査委員会の見解」[3](以下「審査委員会見解」という。)および令和5年(2023年)4月14日に認定された「大阪・夢洲地区特定複合観光施設区域の整備に関する計画」(以下「大阪府IR整備計画」という。)[4]に基づき、「長崎県IR整備計画」が認定されなかった要因について分析する。

 また、今後、新たにIR整備法に基づく区域整備計画の認定申請の手続がなされる場合における留意事項について解説する。

 

Ⅰ IR整備法

1 目的

 IR整備法は、いわゆるカジノを含む統合型リゾート(特定複合観光施設)の整備を目的とする法律である。同法では、適切な国の監視及び管理の下で運営される健全なカジノ事業の収益を活用して地域の創意工夫及び民間の活力を生かした特定複合観光施設区域の整備を推進することにより、国際競争力の高い魅力ある滞在型観光を実現するため、必要な事項を定め、もって観光及び地域経済の振興に寄与するとともに、財政の改善に資することを目的としている(同法1条)。

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(わたなべ・まさゆき)

弁護士法人三宅法律事務所パートナー
1995年東京大学法学部卒業、1997年司法試験に合格し、2000年総理府退職、翌2001年司法修習修了(54期)、同年弁護士登録(第二東京弁護士会)。2007年Columbia Law School (LL.M.)を修了後、2009年に現在の三宅法律事務所に入所。2017年4月より特定複合観光施設区域整備推進会議委員。
著書:『個人情報保護法Q&A――令和5年施行対応』(第一法規、2023)、(共著)『マネー・ローンダリング反社会的勢力対策ガイドブック〔改訂版〕――2021年金融庁ガイドライン等への実務対応』(第一法規、2022)ほか多数

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