SH4926 公取委による「グリーン社会の実現に向けた事業者等の活動に関する独占禁止法上の考え方」の改定 矢上浄子/酒寄里彩(2024/05/15)

取引法務競争法(独禁法)・下請法

公取委による「グリーン社会の実現に向けた事業者等の活動に
関する独占禁止法上の考え方」の改定

アンダーソン・毛利・友常法律事務所*

弁護士 矢 上 浄 子

弁護士 酒 寄 里 彩

 

 公正取引委員会(以下「公取委」という。)は、グリーン社会の実現に向けた事業者および事業者団体(以下「事業者等」という。)の取組を後押しすることを目的として、2023年3月31日付けで「グリーン社会の実現に向けた事業者等の活動に関する独占禁止法上の考え方」(以下「グリーンガイドライン」という。)を策定した。公取委は、市場や事業活動の変化、具体的な法執行や相談事例等を踏まえ、継続的にグリーンガイドラインの見直しを行うことを表明している。

 このたび公取委は、具体的な相談事例や事業者等との意見交換の結果等を踏まえ、2024年4月24日にグリーンガイドラインを改定した[1]。本改定においては、事業者等の取組が独占禁止法上問題となるかについての公取委の考え方が追記・補足されたほか、具体的な想定例が8件追加されている。以下では、このうち基本的考え方、共同の取組および企業結合に関する改定の概要を俯瞰する。

 

1 基本的考え方

 グリーン社会の実現に向けた事業者等の取組は、事業者間の公正かつ自由な競争を制限する効果のみを持つ場合、独占禁止法上問題となる。また、事業者等の取組に競争制限効果と競争促進効果がいずれも見込まれる場合、当該取組の目的の合理性および手段の相当性(より制限的でない他の代替的手段があるか等)を勘案しつつ、当該取組から生じる競争制限効果と競争促進効果を総合的に考慮して、独占禁止法上問題となるか否か判断される。

 本改定では、以上の枠組みのもと、「独占禁止法上問題となる行為」として挙げられている想定例であっても、情報遮断措置等の措置による競争制限効果の解消のほか、海外からの輸入圧力の増加といった国際的な競争状況も含めた市場の動向等の様々な追加的な検討要素を考慮し、事業者等からの説明も踏まえ、競争制限効果が解消されていること等が事実と認められる場合には、独占禁止法上問題ないと判断し得ることが示された。

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(やがみ・きよこ)

アンダーソン・毛利・友常法律事務所パートナー。2002年ニューヨーク州弁護士登録、2008年弁護士(第二東京)登録。主に独占禁止法・競争法、クロスボーダーM&A・ジョイントベンチャー、国際紛争等の分野でアドバイスを行う。神戸大学大学院法学研究科及び早稲田大学大学院法務研究科で非常勤講師を務める。プロボノ活動にも積極的に取り組む。

 

(さかより・りさ)

アンダーソン・毛利・友常法律事務所アソシエイト。2021年東京大学法学部卒業。2022年弁護士登録(第二東京弁護士会)。

 

アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業 https://www.amt-law.com/

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