SH4955 GPIF、「第9回 機関投資家のスチュワードシップ活動に関する上場企業向けアンケート集計結果」を公表――TCFD賛同は回答企業の80%超、統合報告書など作成も約72%で継続増加 (2024/05/30)

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GPIF、「第9回 機関投資家のスチュワードシップ活動に関する
上場企業向けアンケート集計結果」を公表
――TCFD賛同は回答企業の80%超、統合報告書など作成も約72%で継続増加――

 

 年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は5月24日、「第9回 機関投資家のスチュワードシップ活動に関する上場企業向けアンケート集計結果」を公表した。

 GPIFでは運用受託機関のスチュワードシップ活動に関する評価、目的を持った建設的な対話(エンゲージメント)の実態、前回アンケート実施以降の変化の把握を目的として上場企業を対象に継続的なアンケート調査を実施しているところである(前回調査の集計結果などについて、SH4463 GPIF、「第8回 機関投資家のスチュワードシップ活動に関する上場企業向けアンケート集計結果」を公表――TCFD賛同は回答企業の約72%と大幅増加、統合報告書など作成は約67%で2ポイント増(2023/05/31)既報)。

 今般の調査では2023年12月18日時点のTOPIX構成企業2,154社(前回2,162社、前々回2,183社)を対象として2024年1月18日~3月22日にアンケートを実施、717社から回答が寄せられた(回答率33.3%。前回735社・34.0%、前々回709社・32.5%)。

 質問項目を巡っては、前回調査において(a)機関投資家と社外役員との対話実施状況に関する質問(公表PDF資料「第8回 機関投資家のスチュワードシップ活動に関する上場企業向けアンケート集計結果」15頁参照。以下同様)、(b)協働エンゲージメントの実施状況に関する質問(16・17頁)、(c)GPIFの国内株式運用受託機関によるエンゲージメントに対する評価の概要の公表(18頁)などが追加されたところ、今回調査では(A)東京証券取引所の「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」の要請に関する質問(公表PDF資料「第9回 機関投資家のスチュワードシップ活動に関する上場企業向けアンケート集計結果」29頁~31頁(本PDFファイル30/48頁~32/48頁。本稿では以下略す)参照。以下同様)、(B)社外役員による対話の具体的な内容や感想に関する質問(13頁・14頁)、(C)取締役会でのESGやサステナビリティの議論状況に関する質問(33頁)、(D)自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)に関する質問(27頁・28頁)、(E)上記「(c)GPIFの国内株式運用受託機関によるエンゲージメントに対する評価」に絡み高く評価された事例の公表(17頁)などを追加した。新規の各項目につき公表PDF資料においては赤い文字で「NEW」と表示されており、適宜参考とされたい。

 新設項目となる上記(A)東証の「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」の要請を巡り、①本要請について「貴社内で議論は行われていますか」を尋ねると、「はい」とする回答が96.6%を占めた。②これらの回答会社に「議論はどのような場で行われていますか(今後の予定含む)」を聞く設問では、取締役会:80.4%、社内役員(執行役員含む)での会議体:71.9%、その他:16.5%との回答が寄せられている(複数選択可)。

 前回調査における新設項目について今回調査の調査結果から回答の推移をみると、上記(a)を巡り「機関投資家から社外役員(社外取締役、社外監査役)との対話を要請された」とする回答は29.8%(前回33.3%)。要請があった会社に対して「対話を行ったか」を聞くと、実施した:58.1%(前回56.6%)、実施しなかった:34.3%(前回33.1%)などとなり、実施率自体は1.5ポイント上昇したことになる。今回調査によれば、実施した大まかな感想とし、高評価:93.5%、低評価:5.2%、中立:1.3%といった回答が得られた。

 上記(b)に関しては「協働エンゲージメントの要請を受けた」とする回答が10.5%(前回9.6%、0.9ポイント増)と増加したのに対し、実際に「対話を実施した」とする回答は42.9%(前回65.2%、22.3ポイント減)と減少、「実施しなかった」とする回答が55.7%(前回33.3%、22.4ポイント増)と増加した。ただし、「実施しなかった理由の主な事例」として今回調査結果では「運用機関個別と対話実施済」が新たに掲げられている。

 IR・ESG活動を巡り継続的な設問となっている「統合報告書またはそれと同等の目的の機関投資家向け報告書を作成していますか?」を問う調査によると「作成している」企業が72.3%にのぼり、前回調査比5.1ポイントの顕著な増加をなお示していることが分かった。「作成している」とする回答の推移は次のとおりとなっている。前回(2023年公表):492社・67.2%、前々回(2022年公表):457社・65.1%、第6回調査(2021年公表):390社・58%、第5回調査(2020年公表):350社・53%、第4回調査(2019年公表):292社・51%。

 同様に「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)に賛同されていますか?」の回答状況の推移を確認すると、賛同企業として第5回調査:144社(回答647社に対し、22.3%)、第6回調査:208社(回答664社に対し、31.3%)、前々回:382社(回答707社に対し、54.0%)、前回:521社(回答725社に対し、71.9%)と急伸する状況で推移してきたところ、今回:576社(回答716社に対し、80.4%)となり、継続して大幅な増加を示す恰好となった。

 枝問となる「TCFDに沿った情報開示をされていますか?」についても「開示している」が609社(回答668社に対し、91.2%)に及んだ。本設問については「今回からTCFD賛同企業に限定せず」とする注記が付されており、前回:462社(回答511社に対し、90.4%)と比較すると、開示企業数にして147社の顕著な増加がみられる。

 


GPIF、「第9回 機関投資家のスチュワードシップ活動に関する上場企業向けアンケート集計結果」の公表
https://www.gpif.go.jp/esg-stw/stewardship/stewardship_questionnaire_09.html

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