SH4984 新しい資本主義実現本部、アセットオーナー・プリンシプル(案)を公表 菅隆浩/稲村将吾(2024/06/20)

組織法務経営・コーポレートガバナンス

新しい資本主義実現本部、アセットオーナー・プリンシプル(案)
を公表

アンダーソン・毛利・友常法律事務所*

弁護士 菅   隆 浩

弁護士 稲 村 将 吾

 

1 はじめに

 2024年6月3日、アセットオーナー・プリンシプルに関する作業部会(「作業部会」)が「アセットオーナー・プリンシプル(案)」を公表した[1]

 これは、2023年12月13日付「資産運用立国実現プラン」(資産運用立国分科会取りまとめ)の中で、「アセットオーナーがそれぞれの運用目的・目標を達成し、受益者等に適切な運用の成果をもたらす等の責任を果たす観点から、アセットオーナーに共通して求められる役割があると考えられ」、「アセットオーナーの運用・ガバナンス・リスク管理に係る共通の原則(アセットオーナー・プリンシプル)を2024年夏目途に策定する」とされたことに伴うものである。

 「アセットオーナー・プリンシプル(案)」は、今後パブリックコメントを経て完成することとなるが、以下では、その概要について解説する。

 

2 各種前提事項

⑴ 「アセットオーナー・プリンシプル(案)」とは何か

 アセットオーナー・プリンシプル(案)は、「アセットオーナーが受益者等の最善の利益を勘案して、その資産を運用する責任(フィデューシャリー・デューティー)を果たしていく上で有用と考えられる共通の原則を定める」ものである(「背景及び目的」)。

 

⑵ 「アセットオーナー」とは何か

 アセットオーナー・プリンシプル案では、アセットオーナーの定義がない(「アセットオーナーの範囲は、公的年金、共済組合、企業年金、保険会社、大学ファンドのほか、例えば資産運用を行う学校法人など幅広く、その規模や運用資金の性格等は様々である」とあるのみである。)。これは、作業部会が適用対象を個別列挙するアプローチを採用しないことに起因するものである。

 ここで、アセットオーナーは、単に「資金の出し手」と記載している場合もあり、「自身の保有資産でもって投資を行うエンジェル投資家といった富裕層もこれに含まれるのではないか」との指摘が入りうるところであるが、アセットオーナーの資産運用の成果により直接的または間接的に利益を享受する受益者等の存在を前提としているため、そういった存在を前提としない資産保有者は、ここでのアセットオーナーに該当するというわけではない。

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(すが・たかひろ)

アンダーソン・毛利・友常法律事務所パートナー。2009年 京都大学法科大学院卒業。2010年弁護士登録(第二東京弁護士会)。2014年7月~2015年6月 外資系証券会社投資銀行本部出向勤務。2016年8月~2017年5月米国University of California, Berkeley, School of Law (LL.M.)へ留学。

 

(いなむら・しょうご)

アンダーソン・毛利・友常法律事務所アソシエイト。2014年創価大学法学部卒業。2017年東京大学法科大学院卒業。2019年弁護士登録(第二東京弁護士会)。

 

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* 「アンダーソン・毛利・友常法律事務所」は、アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業および弁護士法人アンダーソン・毛利・友常法律事務所を含むグループの総称として使用

 

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