SH5169 個人情報保護法のいわゆる3年ごと見直しに関する検討会(第3回)の開催 井上乾介/西村順一郎/赤木優飛(2024/10/31)

取引法務個人情報保護法

個人情報保護法のいわゆる3年ごと見直しに関する検討会(第3回)の開催

アンダーソン・毛利・友常法律事務所*

弁護士 井 上 乾 介

弁護士 西 村 順一郎

弁護士 赤 木 優 飛

 

1 はじめに

 目下、個人情報の保護に関する法律(以下「個人情報保護法」または「法」という。)のいわゆる「3年ごと見直し」に関する議論が個人情報保護委員会において進められており、2024年7月24日に、個人情報保護法のいわゆる3年ごと見直しに関する検討会(以下「検討会」という。)が設置され、課徴金制度、団体による差止請求制度および被害回復制度、ならびにその他検討会における議論の状況等を踏まえ必要と考えられる事項を検討事項として、議論が重ねられている[1]

 本稿では、9月26日に開催された検討会の第3回での議論を概観する。

 

2 第3回検討会の議論の概要

⑴ 課徴金制度

ア 現行制度の限界

 検討会資料では、現行法における監督や刑事罰による対応の限界および問題点について、以下のようにまとめられている[2]

 ① 行政上の監督権限による対応

   現行の個人情報保護法上、個人情報保護委員会には、以下の通り、違反事業者に対して指導・助言、勧告、命令を行う権限がある(法147条・148条)[3]

 

出典:「個人情報保護法のいわゆる3年ごと見直しに関する検討会 第3回 資料3」
(個人情報保護委員会、2024年9月26日)3頁

 

   しかし、違反行為を行った事業者が勧告や命令を受けた後に違反行為を中止した場合、罰則が適用されず、違反行為によって得られた経済的利得を保持できることから、大きな経済的利益を伴う場合には、勧告や命令のみでは「やり得」を防止することが難しいとされている。

   違反行為によって得られる経済的利得としては、不当な個人データの公表や不適切な広告利用、違法な第三者提供による対価、安全管理措置の軽視によるコスト削減などがある。

 ② 直罰規定による対応

   現行の個人情報保護法には、個人情報データベース等の不正提供に対する罪(法179条)および法人に対する両罰規定(法184条1項1号)が存在する[4]

 

出典:「個人情報保護法のいわゆる3年ごと見直しに関する検討会 第3回 資料3」
(個人情報保護委員会、2024年9月26日)7頁

 

   しかし、現行の刑事罰規定には次のような懸念がある。

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(いのうえ・けんすけ)

アンダーソン・毛利・友常法律事務所 スペシャル・カウンセル。2004年一橋大学法学部卒業。2007年慶応義塾大学法科大学院卒業。2008年弁護士登録(東京弁護士会)。2016年カリフォルニア大学バークレー校・ロースクール(LL.M.)修了。2017年カリフォルニア州弁護士登録。著作権法をはじめとする知的財産法、個人情報保護法をはじめとする各国データ保護法を専門とする。

 

(にしむら・じゅんいちろう)

アンダーソン・毛利・友常法律事務所アソシエイト。2016年東京大学法学部卒業。2018年東京大学法科大学院卒業。2019年弁護士登録(第二東京弁護士会)。主な取扱い分野は、知的財産法、個人情報保護法。2022年9月から2024年3月まで個人情報保護委員会事務局に出向。官民を問わず個人情報の取扱いにかかるルールの策定等に携わる。

 

(あかぎ・ゆうひ)

アンダーソン・毛利・友常法律事務所アソシエイト。2021年東京大学法学部卒業。2022年東京大学法科大学院中退。2023年弁護士登録(第一東京弁護士会)。

 

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