公取委、給油所運営の石油製品小売2事業者に対して独占禁止法「不当廉売」の疑いで警告
――沖縄県における本年2月~6月のガソリン販売事案、周辺の他事業者に対する注意も併せて発表――
公正取引委員会は11月7日、沖縄県で給油所を運営する石油製品小売2事業者がレギュラーガソリンの供給においてそれぞれ独占禁止法2条9項3号(不当廉売)・19条(不公正な取引方法の禁止)に違反するおそれがある行為を行っていたとして同日、警告を行ったと発表した。本発表は内閣府沖縄総合事務局との連名による。
沖縄県沖縄市所在事業者の3給油所および浦添市所在事業者の1給油所において今年2月1日~6月30日の一定期間、(ア)レギュラーガソリンにつき「その供給に要する費用を著しく下回る対価で継続して供給」し、(イ)「当該給油所の周辺地域に所在する他のレギュラーガソリンの販売業者の事業活動を困難にさせるおそれ」を生じさせた疑いがあるとされる。同様の行為を今後行わないよう警告がなされた。沖縄県石油商業組合・沖縄県石油業協同組合のウェブサイトによると、いずれもENEOS系列の給油所とみられる(11月12日閲覧)。公取委は併せて周辺地域の他の2事業者(5給油所)に対し、「不当廉売につながるおそれがある行為」を行っていたとして注意を行った。
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独占禁止法(昭和22年法律第54号)において不当廉売は同法2条9項3号が「正当な理由がないのに、商品又は役務をその供給に要する費用を著しく下回る対価で継続して供給することであつて、他の事業者の事業活動を困難にさせるおそれがあるもの」と定め、また、不公正な取引方法(昭和57年公正取引委員会告示第15号)の第6項が「法第2条第9項第3号に該当する行為のほか、不当に商品又は役務を低い対価で供給し、他の事業者の事業活動を困難にさせるおそれがあること」と規定する。
別にガイドラインとして「不当廉売に関する独占禁止法上の考え方」(平成21年12月18日、最終改正・平成29年6月16日)が定められているほか、ガソリン販売については「ガソリン等の流通における不当廉売、差別対価等への対応について」(令和4年11月11日)により、公取委の考え方として上記(ア)に係る「供給に要する費用を著しく下回る対価で継続して供給」する場合、(イ)「他の事業者の事業活動を困難にさせるおそれ」の考え方――などを取引実態を踏まえて仔細に明らかにしているところである。
茨城県で給油所を運営する東京都品川区所在の1事業者(1給油所)に対して2023年5月17日、不当廉売のおそれがあるとして警告がなされた事案も独占禁止法2条9項3号・19条に基づくものであった。当該事案の公表に伴っては、他の4事業者(6給油所)に対する注意が行われた。
これらの事案を含めた2023年度中の不当廉売事案の処理状況をみると、警告は当該事案1件、注意件数の合計は317件。注意件数の内訳は石油製品:233件、酒類:29件、家庭用電気製品:0件、その他:55件であった。近年の推移は、次のとおりである。2022年度:警告0件、注意192件(石油製品:151件、酒類:37件、家庭用電気製品:0件、その他:4件)。2021年度:警告0件、注意244件(石油製品:206件、酒類:29件、家庭用電気製品:1件、その他:8件)。2020年度:警告0件、注意136件(石油製品:115件、酒類:9件、家庭用電気製品:0件、その他:12件)。
なお、2022年度および2023年度の注意件数公表に伴っては、石油製品に係る注意の態様として「繰り返し注意を受けていた大規模な給油所を含む複数の給油所を運営する事業者の本社の責任者に対し、供給に要する費用を下回る対価で販売したとして直接注意した事例があった」としている(以上、各年度の「年次報告」による)。
今般の警告等発表において公取委は、本件が「例えば1年以内に注意を受けた給油所に係る実質的仕入原価割れの事案など、繰り返し行われている不当廉売事案であって、周辺の販売業者に対する影響が大きいと考えられるものについては、周辺の販売業者の事業活動への影響等についても調査を行い、問題のみられる事案については、厳正に対処するという方針(「ガソリン等の流通における不当廉売、差別対価等への対応について」第1の2(2))に沿って対処した事案である」と特別に記して説明。
本方針・第1の2は「公正取引委員会の対応」を定めるものであり、その(1)においては「(申告のあった事案に関する)処理結果を通知するまでの目標処理期間を原則2か月以内」とするいわゆる迅速処理などについて規定。2(2)は「大規模な事業者による不当廉売事案」「繰り返し行われている不当廉売事案」であって「周辺の販売業者に対する影響が大きいと考えられるもの」に係る規定で、「問題のみられる事案については、厳正に対処し、排除措置命令や警告に至らない場合であっても、責任者を招致するなどした上で、文書により厳重に注意する」ことを定める。
続く2(5)では警告・注意等を行った事業者への対応を規定し、「再発防止、違反行為の未然防止等の観点から、その後の価格動向について情報収集を行うこととし、特に、繰り返し注意を受けた事業者については、必要に応じて、販売価格、仕入価格等について報告を求めるなどして問題がみられる場合には早期に対処する」こととしている。
公取委、沖縄県沖縄市及び同県中頭郡北中城村において給油所を運営する石油製品小売業者に対する警告等について
https://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/2024/