欧州統一特許裁判所(UPC)と国内裁判所の二重管轄に関するUPC控訴裁判所による重要判決(2024年11月12日)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所*
弁護士・ニューヨーク州弁護士 後 藤 未 来
弁理士・カリフォルニア州弁護士 市 川 祐 輔
1 はじめに
欧州統一特許裁判所(Unified Patent Court。以下「UPC」という。)が、2023年6月1日より開始された。統一特許裁判所協定(Unified Patent Court Agreement。以下「UPCA」という。)は、欧州各国の国内裁判所(以下「国内裁判所」という。)から、UPCへの移行期間(transitional period)として、7年間を定め[1]、(移行期間中における)UPCと国内裁判所との二重管轄を規定する[2]。
本稿で紹介するUPCの控訴裁判所による判決[3](以下「本判決」という。)は、この二重管轄を規定するUPCA83条の解釈についての重要な判断を含む。
すなわち、本判決は、UPCA83条(4)が規定する「アクション」について、2023年6月1日より前に国内裁判所に提起されたものは含まないとの解釈を示した。本判決によれば、UPCの移行期間の開始日(2023年6月1日)より前に欧州特許に基づく訴訟が国内裁判所で提起された場合、オプトアウト[4]の取下げが可能であり、(UPCA83条(4)の所定の条件を充足すれば)当該欧州特許につきUPCの管轄が認められることとなる。
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(ごとう・みき)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所パートナー、弁護士・ニューヨーク州弁護士。理学・工学のバックグラウンドを有し、知的財産や各種テクノロジー(IT、データ、エレクトロニクス、ヘルスケア等)、ゲーム等のエンタテインメントに関わる案件を幅広く取り扱っている。ALB Asia Super 50 TMT Lawyers(2021、2022)、Chambers Global(IP分野)ほか選出多数。AIPPIトレードシークレット常設委員会副議長、日本ライセンス協会理事。
(いちかわ・ゆうすけ)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所 弁理士。2007年早稲田大学(工学博士)。2008年弁理士登録。2016年カリフォルニア州弁護士登録。
ディープラーニング、通信ネットワーク、ブロックチェーンなど主にIT関連の技術分野と特許法をはじめとする知的財産法を専門とする。
アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業 https://www.amt-law.com/
<事務所概要>
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