SH5280 企業取引研究会報告書の公表――下請法の改正および構造的な価格転嫁の実現に向けた提言 原悦子/西向美由(2025/01/20)

取引法務競争法(独禁法)・下請法

企業取引研究会報告書の公表
――下請法の改正および構造的な価格転嫁の実現に向けた提言――

アンダーソン・毛利・友常法律事務所*

弁護士 原    悦子

弁護士 西 向 美 由

 

1 はじめに

 公正取引委員会と中小企業庁は、2024年12月25日、企業取引研究会報告書[1](以下「本報告書」という。)を公表し、これに対する意見募集を開始した。

 日本経済がデフレから完全に脱却し、経済の好循環を実現するためには、サプライチェーン全体での「構造的な価格転嫁」の実現が必要であるとの問題意識に基づき、公正取引委員会事務総局および中小企業庁は、2024年7月以降、企業取引研究会(以下「本研究会」という。)を開催し、適切な価格転嫁を新たな商慣習として定着させていくための取引環境を整備する観点から、下請代金支払遅延等防止法(以下「下請法」または「法」という。)を中心に、私的独占の禁止および公正取引の確保に関する法律(以下「独占禁止法」という。)の優越的地位の濫用規制の在り方について検討を行ってきた。

 本報告書は、本研究会による検討結果を取り纏めたものであり、優越的地位の濫用規制の在り方について、下請法を中心に、現状の課題とその対応策について検討している。以下、本報告書の内容について概説する。

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(はら・えつこ)

アンダーソン・毛利・友常法律事務所パートナー。1998年東京大学法学部卒業。2001年弁護士登録(第二東京弁護士会)。2006年コロンビア大学ロースクール(LL.M.)修了。2007年ニューヨーク州弁護士登録。2019年~2022年東京大学大学院法学政治学研究科准教授。独禁法の分野において、独禁調査案件、企業結合届出の対応に幅広い経験を有するほか、クロスボーダーでの事業展開、フランチャイズ、戦略的提携に関する案件、通商業務も多く取り扱う。

 

(にしむかい・みゆ)


アンダーソン・毛利・友常法律事務所アソシエイト。2008年京都大学法学部卒業。2010年東京大学法科大学院卒業。2011年弁護士登録(所属弁護士会)。2018年3月-8月・ベルギー ブリュッセルのMcDermott Will & Emery法律事務所勤務。

 

アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業 https://www.amt-law.com/

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アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業は、日本における本格的国際法律事務所の草分け的存在からスタートして現在に至る、総合法律事務所である。コーポレート・M&A、ファイナンス、キャピタル・マーケッツ、知的財産、労働、紛争解決、事業再生等、企業活動に関連するあらゆる分野に関して、豊富な実績を有する数多くの専門家を擁している。国内では東京、大阪、名古屋に拠点を有し、海外では北京、上海、香港、シンガポール、ハノイ、ホーチミン、バンコク、ジャカルタ等のアジア諸国およびロンドン、ブリュッセルに拠点を有する。

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* 「アンダーソン・毛利・友常法律事務所」は、アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業および弁護士法人アンダーソン・毛利・友常法律事務所を含むグループの総称として使用

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