◇SH3133◇ベトナム:証券法の改正(1) 鷹野 亨(2020/05/07)

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ベトナム:証券法の改正(1)

長島・大野・常松法律事務所

弁護士 鷹 野   亨

 

はじめに

 ベトナムの証券取引市場は、上場企業数が700社を超えるなど成長傾向にあり、外国人投資家からの関心が高まっている。

 2019年11月26日、現行証券法(以下「現行法」という)を改正する法律54/2019/QH14号(以下「改正法」という)が、国会で可決された。改正法は2021年1月1日に施行される。

 改正法では、公開会社の定義や公募条件等の証券取引に関するルールが、明確化・厳格化されている。

 以下、改正法の主な変更点について、2回に分けてご説明したい。

 

証券取引所の統合見送り

 証券法改正の議論において、最も重要な議題とされたのは、既存のハノイ証券取引所(HNX)とホーチミン証券取引所(HOSE)の統合の是非であった。

 現在、ベトナムには上記2つの証券取引所があり、大型株(上場申請時点の払込済定款資本が1200億ベトナムドン以上)を取り扱うホーチミン証券取引所に対して、中・小型株(同300億ベトナムドン以上)を取り扱うのがハノイ証券取引所である(政令58/2012/ND-CP号53条、54条)。

 証券法改正案の検討当初、ベトナム政府では、ハノイ証券取引所とホーチミン証券取引所を統合して「ベトナム証券取引所」を設立し、両証券取引所をその子会社とする案が議論されていた。

 しかしながら、改正法制定時にはこの統合は見送りとなり、今後段階的な再編を検討することとなった。改正法では、「ベトナム証券取引所」の具体的な構想や設立期限までは言及せず、将来的に証券取引所を運営することができるのは、国家が50%超を出資する「ベトナム証券取引所」と、その子会社のみであるという枠組みを示すにとどまった(改正法43条)。

 

公開会社の定義変更

 改正法では、「公開会社」の定義が以下の通り変更されている。

 なお、ベトナムにおける公開会社は、以下の通り(現行法③、改正法①)一定の資本と株主に関する要件を満たせば、株式を上場しておらず公募も行っていない株式会社であっても該当する点に留意が必要である。

現行法(25条1項) 改正法(32条1項)
 
 以下のいずれかに該当する株式会社を指す。

  1. ① 株式の公募を行った会社
  2. ② 証券取引所に株式を上場している会社
  3. ③ 100名以上の株主(機関投資家を除く)を有し、払込済定款資本が100億ベトナムドン以上である会社
 
 以下のいずれかに該当する株式会社を指す。

  1. ① 払込済定款資本が300億ベトナムドン以上であり、議決権付株式の10%以上が100名以上の株主(大株主(※)を除く)に保有されている会社
  2. ② 証券取引所に上場して最初の株式公募を完了させた会社
     
  3. ※ 大株主:発行会社の議決権付株式の5%以上を保有する株主を意味する(改正法4条18号)

 

 以上の通り、改正法①では、現行法③の要件について払込済定款資本の金額を引き上げる等厳格化している。

 改正法②は、現行法①(株式公募)と現行法②(証券取引所への上場)の2つを必要要件とする。そのため、株式を公募したが上場はしていない会社は、改正法の下では公開会社には原則として該当しないこととなる。

(次稿に続く)

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