タイ:個人情報保護法・施行の延期
(本格的な施行は2021年5月31日以降へ)
長島・大野・常松法律事務所
弁護士 箕 輪 俊 介
タイでは、2019年5月28日から個人情報保護法が部分的に施行され、かかる部分的な施行から1年後の2020年5月27日から同法の本格的な施行が開始されることがこれまで予定されていた。ところが、新型コロナウィルスの影響もあり、個人情報保護法を導入するための準備が官民を問わず遅れているため、2020年5月21日付で公布された勅令(以下、「本勅令」という。)により、この本格的な施行は更に一年延長され、2021年5月31日から施行されることとなった。
本勅令では施行の延期の対象となる業種として22種が規定されているが、22種の内容には多岐に渡る。「工業事業(industrial business)」や「商業事業(commercial business)」に加え、農業、医療・公衆衛生事業、熱電等エネルギー事業、建設業、輸送業、修理・メンテナンス事業、観光業、通信事業、不動産業、専門家事業、教育業、エンターテイメント事業及び自営業等も含まれるため、この22種の業種に含まれない(延長の対象にならない)事業は想定されていないものと考えられる(当局の担当官も匿名で照会をする限り、同様の見解を示している)。本勅令上、この22業種に含まれない事業の処遇については個人情報保護委員会により決定されるとなされている。
上記の施行の延期により、2020年5月末までに拙速に個人情報保護法の本格的な施行に対する対応を行う必要はなくなった。ただ、本格的な施行の開始時期は延長されたものの、早晩施行されるという事実は変わらない。したがって、今後施行されるであろう下位規則の内容を検討し、本格的な施行の開始までに間に合うように体制を作り上げている必要があることは変わらない。
なお、本勅令では、情報管理者は、本法を管轄するデジタル経済社会省が別途定める個人情報の安全措置を講じならなければならない旨を別途規定している。したがって、この点についても、デジタル経済社会省が別途定める規定の内容を確認し、体制を整えるべきであるといえる。