◇SH0207◇インドネシア:外貨建てオフショア債務に対する新規制(続) 前川陽一(2015/02/03)

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インドネシア:外貨建てオフショア債務に対する新規制(続)

長島・大野・常松法律事務所

弁護士 前 川 陽 一

 前稿において解説した外貨建てオフショア債務に関するインドネシア中央銀行規則No. 16/20/PBI/2014(以下「規則16/20」という。)は、その施行直前に公布された中央銀行規則No. 16/21/PBI/2014(以下「規則16/21」という。)により、現実に施行されることなく廃止された。規則16/21も、銀行を除く全ての事業会社を対象として、外貨建てオフショア債務を有する場合に一定のヘッジ比率、流動性比率及び信用格付けを満たすべきことを要求するという枠組みにおいて規則16/20と同様であるが、同時期に公表された中央銀行通達No. 16/24/DKEMと相俟って規則16/20を修正し、詳細化する内容となっている。

 規則16/21の下における外貨建てオフショア債務に対する規制の主要なポイントを改めてまとめると以下のとおりである。

1 ヘッジ比率

 各四半期末日から起算して3ヶ月以内に弁済期が到来する外貨建て負債が外貨建て資産を超過している場合の超過額、及び各四半期末日から起算して3ヶ月超6ヶ月以内に弁済期が到来する外貨建て流動負債が外貨建て資産を超過している場合の超過額について、それぞれ最低25%(ただし、2015年12月31日までは20%)を為替先物、通貨スワップ、オプション等の方法によりヘッジしなければならない。

 ただし、外貨建て負債が外貨建て資産を超過している場合の超過額が10万米ドルを下回る場合には、ヘッジ義務は免除される。

 規則16/21における定義上、外貨建て負債には商品・サービスの国際取引から生じる債務も含まれ、上記期間内に弁済期が到来する全ての外貨建て負債が対象となる。ただし、弁済期が到来しても借換えやリファイナンスが行われる債務については除外される。他方で、外貨建て資産には、規則16/20における定義に加えて、上記期間内に弁済期が到来する外貨建ての売掛債権(ただし、2015年7月1日前に締結された契約に基づくものに限る。)及び一定の要件を満たす輸出業者における棚卸資産も対象となった。

 ヘッジ取引は、2017年1月1日以降は、インドネシア国内の銀行において行わなければならない。

2 流動性比率

 各四半期末日から起算して3ヶ月以内に弁済期が到来する外貨建て負債に対して外貨建て資産を少なくとも70%(ただし、2015年12月31日までは50%)を維持しなければならない。

外貨建て負債及び外貨建て資産の範囲は(1)記載のとおりである。

3 信用格付け

 2016年1月1日以降に外貨建てオフショア債務を借り入れる銀行以外の事業会社は、外部格付機関が発行するBB-以上の格付けを取得しなければならない。取得した格付けは2年間有効である。リファイナンスの場合又はインフラ整備プロジェクトに関連した国際金融機関からの借入れ等の場合は適用を免れる。

 親会社からの借入れ及び親会社による保証付きの借入れについては、親会社の格付けを利用することができる。また、事業開始から3年以内に行う借入れについても親会社の格付けが利用できることとなった。

 規則16/20と比較すると、対象となる外貨建て負債及び外貨建て資産の範囲がそれぞれ拡張された一方で、ヘッジ義務につき最低基準額が導入され、一定の場合に親会社の格付けの利用が可能になるなど、一部のハードルが下げられたといえよう。

 

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