インドネシア:Eコマースに関する商業大臣規則の制定
長島・大野・常松法律事務所
弁護士 前 川 陽 一
インドネシアにおけるEコマース事業に関しては、昨年11月20日に、電子システム取引に関する政令2019年第80号(以下「政令80号」という。)が制定されていたところであるが、2020年5月19日、政令80号の施行規則である、電子システム取引事業者の事業ライセンス、広告、指導及び監督に関する商業大臣規則2020年第50号(以下「本規則」という。)が制定された。本規則は、政令80号と相俟って、外国事業者がインドネシア国内でEコマース事業を行うための要件等を明らかにしている。
まず、政令80号及び本規則は、Eコマースの事業者を次の3類型に分類する。
- ⑴ マーチャント:電子システムを通して商品・サービスを販売・提供する者(例:小売業者)
- ⑵ Eコマース運営者:電子システム上で商品・サービス取引のためのプラットフォームを提供する者(例:Eコマース・サイトの運営者)
- ⑶ 仲介サービス事業者:通信事業者以外で電子システム上の通信を仲介する者(例:検索エンジンの提供者)
外国企業は、上記いずれの類型でも、インドネシア国内を対象としてEコマース事業を行うことができる。ただし、それぞれ次の要件を満たさなければならない。
- ⑴ 外国マーチャント:インドネシアでの事業ライセンスの取得は不要であるが、商品・サービスを販売・提供する国内Eコマース運営者に対して、出身国における事業ライセンス等を届け出なければならない。
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⑵ 外国Eコマース運営者:以下のいずれかを満たす場合には、インドネシア国内(州都、県又は市内に限る。)に外国商事駐在員事務所を設立しなければならない。
- (a) インドネシアにおいて年間1000人を超える消費者との取引を行っている場合
- (b) インドネシアの消費者に対して年間1000箱を超える配達を行っている場合
- 外国商事駐在員事務所は、消費者保護、競争力向上及び紛争解決に関してインドネシアにおいて当該外国Eコマース運営者を代理することを役割とする。
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⑶ 仲介サービス事業者(外国又は国内の事業者問わず共通の要件):以下のいずれかを満たす場合には、電子システム取引事業ライセンス(SIUPMSE)を取得しなければならない。
- (a) Eコマース取引から直接利益を得る場合
- (b) Eコマース取引の当事者間の契約関係に直接関与する場合
- したがって、Eコマース取引から直接利益を得るものでなく、かつ、Eコマース取引の当事者間の契約関係に直接関与するものでもない場合には、SIUPMSEの取得は不要である。
さらに、本規則は、すべてのEコマース事業者が行う電子広告について、以下の規制を定めている。
- ⑴ 商品・サービスの品質、数量、素材、用法、価格及び納期について消費者を欺いてはならないこと
- ⑵ 商品・サービスにかかる保証について虚偽の説明をしてはならないこと
- ⑶ 商品・サービスについて虚偽の、不正確な、又は誤解を生じさせる情報を含んではならないこと
- ⑷ 商品・サービスにかかる使用上の注意について情報を提供しなければならないこと
- ⑸ 当事者の許諾なく個人又は事例の引用をしてはならないこと
- ⑹ 「close」又は「skip」と表示した、消費者が広告を閉じることができる明確な機能を備えなければならないこと
本規則は、制定から6か月を経過した日(2020年11月19日)から施行される。
以上