中国:輸出管理法と信頼できないエンティティリスト規定について(5)
長島・大野・常松法律事務所
弁護士 若 江 悠
2. リスト掲載手続
UEL掲載の手続につき、弁公室は、職権や関係者による助言、通報に基づき、外国エンティティの行為を調査するか否かを決定するとされている。調査を実施することとした場合、公告する必要がある(5条)。調査期間中、弁公室は当事者への質問、関連書類・資料の閲覧・複製、その他の必要な手段をとることができ、外国エンティティは、陳述・弁明することができる(6条1項)。弁公室は実情に応じ、調査の中止・終了を決定することができるが、決定の根拠となった事実に大きな変化が起こった場合、調査を再開することができる(6条2項)。
3. リスト掲載基準
UEL掲載の基準につき、弁公室は、下記の要素を総合的に考慮し、外国エンティティをUELに掲載するか否かの決定を行い、公布するとされている(7条)。なお、外国エンティティの関連行為・事実が明らかである場合、弁公室は調査をせず、直接、下記の要素を考慮し、UELに掲載するか否かを決定することもできる(8条)。
- ① 中国の国家主権、安全、発展利益に及ぼす危害の程度
- ② 中国企業、その他の組織又は個人の合法的権益に対する損害の程度
- ③ 国際的に通用する経済貿易規則に合致するか否か
- ④ その他の考慮すべき要素
また、UEL掲載に係る公告では、弁公室は実情に応じ、当該外国エンティティの行為を是正する期限を明らかに付けることができる(9条)。
4. 掲載後にとり得る措置
UELに掲載された外国エンティティに対し、弁公室は実情に応じ、下記の対応措置を講じることを決定し、公告することができる(10条)。
- ① 中国と関係する輸出入活動を制限又は禁止する
- ② 中国国内への投資を制限又は禁止する
- ③ 当該エンティティの関係者、交通手段等の入国を制限又は禁止する
- ④ 当該エンティティの関係者の中国国内での就労許可、滞在又は在留資格を制限又は取り消す
- ⑤ 情状により相応の金額の罰金を科す
- ⑥ その他の必要な措置
ただし、中国と関係する輸出入活動を制限又は禁止されている外国エンティティにつき、中国企業、その他の組織又は個人は、特別な状況で当該外国エンティティと取引する必要がある場合には、弁公室に申請し、同意を得てから取引を行うことができる(12条)。
5. リスト削除手続
UELに掲載された外国エンティティは、UELからの削除を申請することができ、弁公室は実情に基づき削除の可否を決定するとされている(13条3項)。
弁公室は、外国エンティティをUELから削除することを決定する場合、当該外国エンティティに対しての対応措置の実施を停止し、公告しなければならない(13条3項)。
以上
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(わかえ・ゆう)
長島・大野・常松法律事務所パートナー。2002年 東京大学法学部卒業、2009年 Harvard Law School卒業(LL.M.、Concentration in International Finance)。2009年から2010年まで、Masuda International(New York)(現 NO&Tニューヨーク・オフィス)に勤務し、2010年から2012年までは、当事務所提携先である中倫律師事務所(北京)に勤務。 現在はNO&T東京オフィスでM&A及び一般企業法務を中心とする中国業務全般を担当するほか、日本国内外のキャピタルマーケッツ及び証券化取引も取り扱う。上海オフィス首席代表を務める。
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