SH3777 法務省、実質的支配者情報リスト制度の創設(令和4年1月31日運用開始)を公表 森下国彦/堀 亜由美(2021/10/05) 

組織法務商業・法人登記

法務省、実質的支配者情報リスト制度の創設
(令和4年1月31日運用開始)を公表

アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業

弁護士 森 下 国 彦

 弁護士 堀   亜 由 美

1 はじめに

 法務省は、令和3年9月17日に、実質的支配者情報リスト制度を創設することを公表した(令和3年9月17日・法務省「実質的支配者リスト制度の創設(令和4年1月31日運用開始)」(https://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00116.html)、以下「法務省ウェブサイト」という。)。

 公的機関において法人の実質的支配者(Beneficial Owner)に関する情報を把握することは、マネー・ロンダリングおよびテロ資金供与防止の観点から、国際的な要請[1]となっている。

 本制度は、法人設立後の継続的な実質的支配者の把握についての取組みの一つとして、登記所が、法人からの申出により、その実質的支配者に関する情報を記載した書面を保管し、その写しを交付する制度である。本制度は令和4年1月31日から運用が開始される。

 なお、後述するとおり、本制度の利用は任意である。そのため、本制度は法律に基づくものではなく、周知のために用いられる形式である「告示」に根拠を置いている[2]

 

2 本制度の目的

 犯罪による収益の移転防止に関する法律(以下「犯収法」という。)は、金融機関等の特定事業者(犯収法2条2項に規定する特定事業者をいう。)に対し、法人である顧客の実質的支配者の確認を義務付けている(犯収法4条1項4号)。

 また、平成30年に施行された改正公証人法施行規則は、株式会社、一般社団法人および一般財団法人の設立に際し、定款認証の嘱託人をして、法人成立の時に実質的支配者となるべき者の氏名、住居および生年月日等と、その者が暴力団員および国際テロリスト(本稿において「暴力団員等」という。以下同じ。)に該当するか否かについて、公証人に対する申告を義務付けた(公証人法施行規則13条の4第1項)。

 このように、わが国においてもマネー・ロンダリングおよびテロ資金供与対策として実質的支配者の把握に関する取組みが行われてきたが、法人設立後の実質的支配者の継続的な把握はなされていなかったことから、既存の情報登録機関である商業登記所を活用した情報管理を推進すべく、商業登記所において実質的支配者の把握促進を行うことが本制度の目的である[3]

 実質的支配者リストは主に銀行等に提出することが想定されているが、本制度の利用申出を行った法人は、実質的支配者リストが保管されている旨が登記簿に付記されることで、社会的にも、当該情報を届け出ている信用性の高い会社と評価され得ることになると考えられる[4]

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(もりした・くにひこ)

アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業パートナー。1981年東京大学法学部卒業。1986年弁護士登録(第二東京弁護士会)。1993年東京大学大学院法学政治学研究科修士課程(専修コース)修了。金融法委員会委員(現共同代表)、金融法学会所属。

(ほり・あゆみ)

アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業アソシエイト。2011年中央大学法学部卒業。2013年東京大学法科大学院卒業。2014年弁護士登録(第一東京弁護士会)。会社法務、M&A、労働法を中心に企業法務一般を取り扱っている。

アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業 https://www.amt-law.com/

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