知的財産戦略本部、「AI時代の知的財産権検討会(第2回)」を開催
――生成AIと知財をめぐる懸念・リスクへの対応等について/
AI技術の進展を踏まえた発明の保護の在り方について――
アンダーソン・毛利・友常法律事務所*
弁護士・カリフォルニア州弁護士 井 上 乾 介
弁護士 藤 井 駿太郎
弁護士 福 山 和 貴
1 はじめに
生成AIと知的財産権との関係については、世界各国で検討が行われている[1]。
日本ではこれまで、2017年3月の「新たな情報材検討委員会報告書」(知的財産戦略本部検証・評価・企画委員会、新たな情報材検討委員会)[2]や、2023年5月の「AIに関する暫定的な論点整理」(AI戦略会議)[3]などにおいて、AIに関する議論がなされてきたほか、2023年7月から文化庁の第23期文化審議会著作権分科会法制度小委員会においても、著作権との関係を中心に生成AIについて審議されている[4]。
これらに加えて、内閣府知的財産戦略本部において、生成AIと知的財産権をめぐる懸念・リスクへの対応等や、AI技術の発展を踏まえた発明の保護の在り方について、関係省庁における論点の整理等も踏まえつつ、必要な対応方策等を検討するため、2023年10月4日、「AI時代の知的財産権検討会」(以下「本検討会」という。)の第1回が開催された[5]。
10月18日には本検討会第2回[6]が開催され、関係団体(一般社団法人日本音楽著作権協会、一般社団法人日本知的財産協会、AIベンチャー、大学教授)へのヒアリングが行われた。本稿では、本検討会の検討課題の概要と、執筆時点で第2回の議事録は未公開であるものの、第2回で提出されたヒアリング資料の概要について紹介する。
2 本検討会で検討すべき課題
本検討会では、基本的視点に基づき、以下の各検討課題について審議することが予定されている。
1.基本的視点 2.生成AIと知財をめぐる懸念・リスクへの対応等について(検討課題Ⅰ) 3.AI技術の進展を踏まえた発明の保護の在り方について(検討課題Ⅱ) |
出典:本検討会第2回「本検討会において検討すべき課題について」(資料5)
(内閣府 知的財産戦略推進事務局、2023年10月18日)[7]1頁
⑴ 基本的視点
本検討会での検討の基本的な視点は、以下のとおりである。
(1)産業競争力強化の視点 (2)AI技術の進歩の促進と知的財産権の保護の視点 (3)国際的視点 |
出典:同上 2頁
上記視点のうち、(2)については、第1回時点では、「(2)AI技術の進歩の促進と権利保護のバランスの視点:生成AIの開発・提供・利用において、AI技術の進歩の促進と知的財産権の保護のバランスが取れた方策等を目指す。」(下線部筆者)[8]とされていたところ、第1回において技術進歩と知財保護は二項対立的なものではない、AI技術は新産業創出の側面が強い等[9]の意見が出たことから、(2)の記載は、上記のとおり、「AI技術の進歩の促進と知的財産権の保護の視点」へと修正された。
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(いのうえ・けんすけ)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所 スペシャル・カウンセル。2004年一橋大学法学部卒業。2007年慶応義塾大学法科大学院卒業。2008年弁護士登録(東京弁護士会)。2016年カリフォルニア大学バークレー校・ロースクール(LLM)修了。2017年カリフォルニア州弁護士登録。著作権法をはじめとする知的財産法、個人情報保護法をはじめとする各国データ保護法を専門とする。
(ふじい・しゅんたろう)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所名古屋オフィスアソシエイト。2013年中央大学法学部卒業。2015年東京大学法科大学院卒業。2016年弁護士登録(2019年より愛知県弁護士会)。主な業務分野は、IT、個人情報保護法など。
(ふくやま・かずき)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所アソシエイト。一橋大学法学部・一橋大学法科大学院卒業。2022年弁護士登録(第一東京弁護士会)。
<事務所概要>
アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業は、日本における本格的国際法律事務所の草分け的存在からスタートして現在に至る、総合法律事務所である。コーポレート・M&A、ファイナンス、キャピタル・マーケッツ、知的財産、労働、紛争解決、事業再生等、企業活動に関連するあらゆる分野に関して、豊富な実績を有する数多くの専門家を擁している。国内では東京、大阪、名古屋に拠点を有し、海外では北京、上海、香港、シンガポール、ホーチミン、バンコク、ジャカルタ等のアジア諸国に拠点を有する。
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