金融審議会「市場制度ワーキング・グループ」の
中間整理とスタートアップ市場の課題
アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業
弁護士 金 子 涼 一
1 はじめに
2022年6月22日、金融審議会「市場制度ワーキング・グループ」(以下「市場制度WG」という。)は、第二次報告(2021年6月18日公表)[1]以降の審議の中間的な整理(以下「本中間整理」という。)を公表した[2]。
金融審議会が設置した市場制度WGは、2020年10月より、金融担当大臣からの「コロナ後の新たな経済社会を見据え、わが国資本市場の一層の機能発揮を通じた経済の回復と持続的な成長に向けて、投資家保護に配意しつつ、成長資金の供給、海外金融機関等の受入れにかかる制度整備、金融商品取引業者と銀行との顧客情報の共有等について検討を行うこと」との諮問に関する議論を重ねてきた。
本中間整理は、「成長と分配の好循環の実現」という観点から(すなわち、①スタートアップ、非上場企業、上場企業等への円滑な成長資金の供給を通じた持続的で力強い経済成長の実現と、②家計による適切な金融商品の選択やポートフォリオの構築を通じた経済成長の成果の家計への還元と資産所得の増加)、金融・資本市場に関する諸施策を進めるべきとする。かかる問題意識のもと、本中間整理で議論されているトピックは多岐にわたるが、特に「スタートアップ」への円滑な成長資金の供給等にも明示的に言及がされ、日本のスタートアップ市場の課題が議論されている点は注目される[3]。
出典:「金融審議会『市場制度ワーキング・グループ』中間整理(概要)」より抜粋。
https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/tosin/20220622/gaiyou.pdf
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(かねこ・りょういち)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業パートナー(弁護士・ニューヨーク州弁護士)。東京大学法学部・同法科大学院卒業、カリフォルニア大学バークレー校・ロースクール修了(LL.M., Business Law Certificate)。M&A・投資やクロスボーダー取引を中心に企業法務全般に幅広い知見を有する。スタートアップの投資・事業提携に関するベンチャー・キャピタルや事業会社へのアドバイス、スタートアップの法務相談に豊富な経験があり、スタートアップ関連の執筆やセミナーも精力的に行う。
<事務所概要>
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