SH4705 雇用管理分野における個人情報のうち健康情報を取り扱うに当たっての留意事項の一部改正 上田潤一/平井裕人(2023/11/27) 

取引法務個人情報保護法

雇用管理分野における個人情報のうち
健康情報を取り扱うに当たっての留意事項の一部改正

アンダーソン・毛利・友常法律事務所*

弁護士 上 田 潤 一

弁護士 平 井 裕 人

 

1 はじめに

  令和5年10月、「雇用管理分野における個人情報のうち健康情報を取り扱うに当たっての留意事項」(以下「本留意事項」という)が一部改正された[1]

 同改正は、全世代対応型の社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律の一部が令和4年1月1日から施行されたことならびに個人情報の保護に関する法律(以下「個人情報保護法」という)等の一部を改正する法律およびデジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律がそれぞれ令和4年4月1日および令和5年4月1日から施行されたことに伴うものである(令和5年10月27日個情2850号 基発1027第4号)。

 本記事では、本留意事項の法律上の位置づけ、内容、改正点等に触れつつ、実務への影響について検討し、読者の理解の一助としたい。

 

2 本留意事項の一部改正

⑴ 本留意事項の位置づけ

 本留意事項は、雇用管理分野における個人情報のうち労働者の健康に関する情報の取扱いについて事業者が留意すべき事項を示した通達である(平成29年5月29日個情第749号 基発0529第3号)。

 それ以前にも、同様の留意事項について示した通達があったが(「雇用管理に関する個人情報のうち健康情報を取り扱うに当たっての留意事項について」(平成16年10月29日基発第1029009号)(以下「旧留意事項通達」という)、本留意事項が設けられたことに合わせて廃止されている。

 本留意事項は、雇用管理分野における個人情報のうち労働者の健康に関する情報の取扱いに関して、個人情報保護法その他の法令における事業者の法的義務を整理し直したものであり、事業者に対して、新たな法的義務を課すものではない。

 なお、本記事は、それらの法的義務について網羅的に解説することを目的とするものではないため、その詳細については、別途、個人情報保護法その他の法令や関連するガイドライン等を確認されたい。

⑵ 本留意事項の内容

 改正後の本留意事項の内容は、概ね次のとおりである。

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(うえだ・じゅんいち)

アンダーソン・毛利・友常法律事務所パートナー。2001年東京大学法学部卒業。2004年弁護士登録(第二東京弁護士会所属)。2012年米国Vanderbilt University・ロースクール(LLM)修了。2013年米国ニューヨーク州弁護士登録。同年英国University College London・ロースクール(LLM)修了。経営法曹会議会員。第二東京弁護士会労働問題検討委員会委員。国際法曹協会(International Bar Association)会員。国内外の様々な業種の依頼者の労働案件、一般企業法務案件、危機管理案件等を幅広く取り扱うほか、訴訟等の紛争案件についても、豊富な経験を有する。

 

(ひらい ひろと)

アンダーソン・毛利・友常法律事務所アソシエイト。2013年中央大学法学部卒業。2015年東京大学法科大学院修了。2016年弁護士登録(東京弁護士会)。労働法及びデータ保護法に関わる案件を幅広く扱っている。『IPO物語 とあるベンチャー企業の上場までの745日航海記』(商事法務、2020)[共著]など著書・論文多数。

 

アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業 https://www.amt-law.com/

<事務所概要>
アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業は、日本における本格的国際法律事務所の草分け的存在からスタートして現在に至る、総合法律事務所である。コーポレート・M&A、ファイナンス、キャピタル・マーケッツ、知的財産、労働、紛争解決、事業再生等、企業活動に関連するあらゆる分野に関して、豊富な実績を有する数多くの専門家を擁している。国内では東京、大阪、名古屋に拠点を有し、海外では北京、上海、香港、シンガポール、ホーチミン、バンコク、ジャカルタ等のアジア諸国に拠点を有する。

<連絡先>
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* 「アンダーソン・毛利・友常法律事務所」は、アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業および弁護士法人アンダーソン・毛利・友常法律事務所を含むグループの総称として使用

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