SH4072 インドネシア:インドネシアにおけるハラール認証制度(2) 中村洸介(2022/07/21)

取引法務消費者法

インドネシア:インドネシアにおけるハラール認証制度(2)

長島・大野・常松法律事務所

弁護士 中 村 洸 介

 

(承前)

⑵ 「ハラール製品プロセス」の確保

 事業者がハラール認証を取得するためには「ハラール製品プロセス」を確保、遵守しなければならない。製品の原材料の調達、加工、保管、包装、流通、販売、提供を含む、製品がハラールであることを確保するための一連の活動を「ハラール製品プロセス」という。

 具体的には、「ハラール製品プロセス」が行われる場所及び設備は、非ハラール製品のための場所及び設備と分離されなければならない。製品の加工の場面では、ハラールと非ハラールの原材料の保管や計量、調理等は別々に行われる必要があり、保管、包装、輸送等においても、ハラールと非ハラールの製品が混同しないようにする必要がある。

 このように、ハラール認証を取得する要件としてサプライチェーン全体がハラールであることが求められていると言える。

⑶ ハラール監督者(Halal Supervisor)の選任

 ハラール認証を申請する事業者は、ハラール監督者を選任しなければならない。ハラール監督者はイスラム教徒であり、法令とハラールについて広い知見及び理解を有することが必要で、その職務は、事業者の「ハラール製造プロセス」を監督することや、必要な是正措置を決定すること等である。

⑷ ハラール認証手続、発行

 ハラール認証を発行するのはBPJPHであるが、その製品がハラールであるかどうかを検査、試験するのは、BPJPHから認定を受けたハラール検査機関(LPH)である。LPHによる検査は、原則として、LPHが選任するハラール監査人(Halal Auditor)によって事業場所において対面形式で実施される。LPHによる検査及び試験の期間は15営業日以内(延長可)とされている。

 LPHによる検査及び試験の結果はMUI及びBPJPHに送付され、MUIが、3営業日以内に、当該製品がハラールであるかどうかを決定し、決定内容をBPJPHに提出する。

 BPJPHが発行するハラール認証の有効期間は4年間である(更新可)。事業者は、ハラール認証を取得した製品にBPJPHが定めるハラールラベルを付してハラールであることを表示しなければならない。

 なお、施行規則の公布日(2021年2月2日)以前にMUI及びBPJPHから発行されたハラール認証も、その期限までは引き続き有効である。

 

2 段階的な実施

 本制度に基づくハラール認証の取得は、以下のとおり製品に応じて段階的に実施されることとなっている。ハラール認証の対象となる物品やサービスをハラールとして販売、提供等する事業者は、以下の各期限までにハラール認証を取得する必要があるため、順次対応が求められる。第一段階は飲食料品等であり、2024年10月17日までにハラール認証を取得する必要がある。

 

主な製品 対応期限
飲食料品 2024年10月17日
化粧品、医薬部外品、サプリメント、化学品、衣料品 2026年10月17日
市販薬、限定市販薬 2029年10月17日
医療機器 2026年10月17日
2029年10月17日
2034年10月17日
(種類によって異なる)

以 上

 


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(なかむら・こうすけ)

2011年早稲田大学大学院法務研究科修了。2012年弁護士登録(第一東京弁護士会)。2019年Columbia Law School卒業(LL.M.)。

2012年に長島・大野・常松法律事務所に入所し、M&A案件を中心に国内外の企業法務全般に従事。ジャカルタ・デスク勤務(2019年10月~2020年)を経て、現在はシンガポール・オフィスに所属し、インドネシアをはじめ東南アジアへの日本企業の事業進出や資本投資、その他現地での企業活動全般についてアドバイスを行っている。

長島・大野・常松法律事務所 http://www.noandt.com/

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