ベトナム:労働法Q&A 5営業日以上連続して無断欠勤した労働者への対応
長島・大野・常松法律事務所
弁護士 井 上 皓 子
ベトナム弁護士 Tran Thi Viet Nga
Q: 労働者が、正当な理由なく5営業日以上連続して無断欠勤した場合、使用者として、労働契約の終了や損害賠償請求などはできるでしょうか?
A:
この点について、SH4269 ベトナム:労働法Q&A 年休日勤務の時間外労働手当 澤山啓伍/Tran Thi Viet Nga(2023/01/12)でも紹介した労働傷病兵社会省発行の2022年7月20日付公文書第308/CP-PC号(以下「公文書308号」)において、労働省の見解が公表されています。その見解に基づいて、考えられるケースとその対応についてまとめました。なお、有給休暇を消化して欠勤している場合は今回の検討の対象外とします。公文書308号では、労働者に主観的な「労働契約を終了したい」という意思があることを証明できるかが一つのポイントとされています。具体的に見ていきます。
ケース1:労働者が使用者に対して、労働法35条に従った事前通知期間前に労働契約を終了する意思を通知して、当該期間経過後に無断欠勤した場合
労働法35条1項によれば、労働者が退職しようとする場合、退職理由によらず、労働契約の期間に応じて、3日(12か月未満の有期契約)、30日(3年以下の有期契約)、又は45日(無期契約)前に使用者に対してその意思を通知する必要があります。この場合、この退職通知により、労働者の退職意図は明白です。労働者が、退職日まで法定期間よりも余裕を持って退職通知を行い、当該期間経過後に欠勤した場合、本来は当該期間を経過すれば退職できることになります。そのため、たとえ労働者が自主的に決めた退職日より前に勝手に出勤を止めたとしても、法律上必要な退職前の事前通知期間の最低限の期間を満たしているため、退職が違法であるという主張は難しく、適法な退職として扱わざるを得ないように思われます。そのため、使用者は、労働者に対して、退職手当の支払いを含めた関連手続きを行う必要があると解されます。
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(いのうえ・あきこ)
2008年東京大学法学部卒業。2010年東京大学法科大学院修了。2011年弁護士登録(第一東京弁護士会)。2018~2020年、長島・大野・常松法律事務所ハノイ・オフィス勤務。日本にお
(Tran Thi Viet Nga)
2016年Hanoi Law University及び名古屋大学日本法教育研究センター(ハノイ)卒業後、長島・大野・常松法律事務所ハノイオフィスに入所。2020年ベトナム弁護士資格を取得。日系企業の事業進出に伴う手続きや法務、現地企業の売買、既進出企業の現地でのオペレーションに伴う法務(事業拡大のための法令調査、紛争、労務、取引契約レビュー等)を担当。
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