中国:改正「不正競争防止法」(1)
不正競争行為、混同行為
長島・大野・常松法律事務所
弁護士 川 合 正 倫
中国の改正「不正競争防止法」が2018年1月1日から施行された。改正前の不正競争防止法は商業賄賂、営業秘密侵害行為、虚偽宣伝等の不正競争行為を規律する法律として1993年に制定された。一方で、制定から24年間の社会状況の変化に対応していないこと、同法制定後に制定された法律との重複や矛盾が生じていること、違反行為に対する制裁が軽く予防効果に欠けること等の批判があり、改正が望まれていた。2016年2月から三度にわたり草案が公布され議論が重ねられた結果、2017年11月4日に全国人民代表大会常務委員会において、改正「不正競争防止法」(以下、「改正法」という。)が制定された。
本稿から三回に分けて、改正法について外資系企業の関心が強いと思われる分野について重要な点を紹介する。
1. 不正競争行為(改正法第2条)
改正法の総則においても旧法と同様に不正競争行為が定義されている。
- 改正法第2条第2項
- 不正競争行為とは、経営者が生産経営活動において、本法の規定に違反し、市場競争秩序を乱し、他の経営者又は消費者の適法な権益を損なう行為をいう。
改正により、「市場競争秩序を乱すこと」が構成要素とされ「消費者」も保護対象とされた。なお、「経営者」とは商品の生産、経営又はサービスを提供する自然人、法人、非法人組織をいうとされている。
改正法では、個別の不正競争行為として、混同行為(第6条)、贈賄行為(第7条)、虚偽宣伝行為(第8条)、営業秘密侵害行為(第9条)、景品付販売行為(第10条)、業務信用毀損行為(第11条)、インターネットを利用した不正競争行為(第12条)に関する規定がおかれている。
2. 混同行為(改正法第6条)
改正法は、(ⅰ) 一定の影響力を有する商品名称又は包装等、(ⅱ) 一定の影響力を有する企業名称又は氏名等、(ⅲ) 一定の影響力を有するドメイン名又はウェブサイト名、(ⅳ) その他の方法により、他人の商品であると誤解させ、又は、他人と特定の関係があると誤解させる混同行為を禁止している。新たな侵害行為類型として上記(ⅲ)が列挙されるとともに、旧法において規定されていた登録商標の冒用行為が商標法との重複を理由に削除された点が主な改正点である。また、他人の商品と誤解させるだけでなく、他人と特定の関係の存在を誤解させる行為も規制対象とされている。
混同行為にかかる行政処罰について厳罰化が図られ、過料額の上限が違法所得(通常は売上げから合理的な支出を控除した額とされる)の3倍から5倍に引き上げられている(改正法第18条)。