企業法務フロンティア
買収防衛策更新における検討課題
~機関投資家の2018年議決権行使基準を踏まえて~
日比谷パーク法律事務所
弁護士 水 野 信 次
海外の機関投資家の議決権行使に強い影響力を有するグラス・ルイスやISSはいずれも買収防衛策に否定的な立場である。
また、2017年5月29日になされた「日本版スチュワードシップ・コード」の改訂を踏まえて、国内機関投資家もそれぞれ議決権行使基準を定め、各自の基準に従って厳格に議決権を行使する動きが一挙に加速した。主要な国内機関投資家である信託銀行及び投資顧問会社等が、株主総会において投資先の買収防衛策議案に対してどのような議決権行使を行ったかについて、各機関投資家のウェブサイトに開示されている議決権行使結果を集計した、ある証券代行の調査結果[1]によれば、「買収防衛策」議案の賛成率は、主要な国内機関投資家の賛成率平均で12.5%であり、3年前と比較可能なところでは、賛成率平均で16.5%と3年前と比べ▲21.1ポイントの大幅な減少であったとのことで、2017年7月末までの1年間に、買収防衛策の有効期間の満了を迎えた会社213社のうち、買収防衛策の廃止又は非継続(経営統合や上場廃止を含む)した会社が44社(213社の20.7%)もあったとのことである。その一方で、当該調査結果によれば、買収防衛策を継続又は更新した会社が169社(213社の79.3%)あり、有効期間を満了する買収防衛策を継続する要請も未だ少なくないと思われる。
そこで、本稿では、2018年議決権行使基準等を踏まえ、買収防衛策を更新する場合に、機関投資家から賛成が得られやすいようにする改訂ポイントを探ってみたい。
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