◇SH1872◇消費者庁、「スマートフォンにおける打消し表示に関する実態調査報告書」を公表(2018/05/30)

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消費者庁、「スマートフォンにおける打消し表示に関する実態調査報告書」を公表

――スマートフォンにおける表示の特徴をもとに景品表示法上の考え方を整理――

 

 消費者庁は5月16日、「スマートフォンにおける打消し表示に関する実態調査報告書」を公表した。

 事業者が商品・サービスの内容や取引条件について訴求するいわゆる強調表示は、対象商品・サービスのすべてについて無条件、無制約に当てはまるものと一般消費者に受け止められるため、仮に例外条件や制約条件などがあるときは、その旨の表示(打消し表示)をわかりやすく適切に行わなければ、一般消費者に誤認され、不当表示として景品表示法上問題となるおそれがある。これに対して消費者庁では、昨年7月14日に「打消し表示に関する実態調査報告書」を公表しているところである(以下、「前回報告書」という)。

 さらに消費者庁では、近年、スマートフォンで商品・サービスの購入・申込みをする消費者が増加している背景を踏まえ、新たにスマートフォンにおける打消し表示に関して、消費者庁が制作した表示例を用いるなどにより、幅広い年代の消費者を対象とした意識調査を行った。また、有識者による研究会(座長=糸田省吾・全国公正取引協議会連合会会長代行)を開催し、意見を聴取した。今般、同調査結果に基づき、景品表示法上の考え方や求められる表示方法等を整理し、公表したものである。

 以下、報告書の概要を紹介する。

 

第3 スマートフォンの表示に接する際の一般消費者の行動

 スマートフォンの表示に接する際の一般消費者の行動に関して、下記の項目のWebアンケート調査結果をまとめている。

  1. ① 一般消費者が普段スマートフォンの表示に接する場面(時間や場所)
  2. ② スマートフォンにおける表示に対する一般消費者の接し方
  3. ③ スマートフォンの広告の閲覧経験及び閲覧対象
  4. ④ スマートフォンにおける取引に関する実態
  5. ⑤ スマートフォンにおける打消し表示に対する一般消費者の認識

 それによると、スマートフォンでの購入経験者(551人)のうち、39.2%がスマートフォンで打消し表示を見落としたことにより誤認して購入・申込みをしたことがあると回答した。

 

第4 打消し表示の方法に関する景品表示法上の考え方

 スマートフォンにおける特徴(画面が小さいこと、一般消費者は関心のある情報だけを拾い読みする傾向があること等)を踏まえて、消費者庁で制作した表示例を用いて、各表示例の打消し表示を回答者が認識できたか否か、また、打消し表示を認識できなかった要因としてどのようなものが考えられるかを調査している。

 そのうえで、「景品表示法上の考え方及び各要素についての留意事項」として、スマートフォンのWebページにおいて、打消し表示の内容を一般消費者が正しく認識できるように適切な表示方法で表示されているか否かは、以下の要素から総合的に判断されるとしている。

  1.  • アコーディオンパネルに打消し表示が表示されているか
  2.  • コンバージョンボタンの配置箇所
  3.  • 強調表示と打消し表示の距離
  4.  • 打消し表示の文字の大きさ
  5.  • 打消し表示の文字とその背景色や模様
  6.  • 他の画像等に注意が引き付けられるか

 

第5 打消し表示の表示内容に関する景品表示法上の考え方

 スマートフォンでは、一般消費者が関心のある情報だけを拾い読みしやすい傾向があるため、他の媒体以上に、打消し表示に気付くことだけでなく、その内容について正しく理解できるものとなっていることが重要であるとして、消費者庁で制作したスマートフォンの表示例を用いて、各表示例(例外型、別条件型、試験条件型)の打消し表示の内容を理解できたか否かを調査している。

  1. ① 例外型(強調された内容に関して、実際には何らかの例外がある旨の注意書き)
  2.    オンライン英会話の表示例についてのWebアンケート調査によると、回答者のうち46.5%が、打消し表示を見た上でも打消し表示の内容を理解できなかったと考えられる。
  3.    前回報告書で示された考え方によると、例外型の打消し表示について、一般消費者が打消し表示を読んでもその内容を理解できない場合、一般消費者は例外事項なしに商品・サービスを利用できるという認識を抱くと考えられる。こうした強調表示および打消し表示から商品・サービスの内容や取引条件について実際のもの等よりも著しく優良または有利であると一般消費者に誤認されるときは、景品表示法上問題となるおそれがある。今回の調査結果でも、この考え方が妥当であることが検証された。
     
  4. ② 別条件型(強調された内容に関して、実際には何らかの別の条件が必要である旨を述べる注意書き)
  5.    健康食品の表示例についてのWebアンケート調査によると、回答者のうち52.9%が、打消し表示を見た上でも打消し表示の内容を理解できなかったと考えられる。
  6.    たとえば、定期購入契約において、初回の価格の安さ等が強調される一方、解約条件が打消し表示に記載されており、打消し表示を読んでもその内容を理解できない場合、一般消費者は解約条件について理解できず、契約期間内の総額費用について誤認すると考えられる。こうした強調表示および打消し表示から商品・サービスの取引条件について実際のもの等よりも著しく有利であると一般消費者に誤認されるときは、景品表示法上問題となるおそれがある。
     
  7. ③ 試験条件型(一定の条件下での性能・効果である旨を述べる注意書き)
  8.    健康飲料の表示例についてのWebアンケート調査によると、回答者のうち34.7%が「商品の効能が実験で確認されている」と誤認し、25.9%が「商品の製造過程における品質管理の内容」を誤認していた。
  9.    たとえば、商品に効果・性能があるかのような強調表示に対し、打消し表示として、商品に含まれる成分に効果・性能があるだけで、実際の商品には効果・性能がない旨を表示する場合のように、強調表示と打消し表示とが矛盾するような場合は、一般消費者に誤認され、景品表示法上問題となるおそれがある。試験結果等の表示により一般消費者の誤認を招かないようにするためには、当該商品の効果・性能等に適切に対応した表示を行う必要があり、成分について試験を行った結果に基づく表示を行う際は、試験の内容や条件等をわかりやすく表示し、当該成分の効果・性能等ではなく実際の商品の効果・性能等を一般消費者が正しく理解できるようにする必要がある。

 

第6 今後の対応

  1. ① 事業者における留意点
  2.    スマートフォンはPC等と比べて画面のサイズが小さいため、コンバージョンボタン等のハイパーリンクが用いられていたり、アコーディオンパネルに情報が表示されたりする等、一般消費者が表示に気付きにくい特徴がみられる。
  3.    今回の調査で明らかになったように、スマートフォンの表示に対する一般消費者の接し方としては、関心のある情報だけを拾い読みする傾向があることや、下にスクロールしないと表示されない情報を見落としやすいこと、関心のある表示を見つけると、その部分だけを見てコンバージョンボタン等をタップするときがあることといった特徴がみられる。
  4.    各事業者においては、上記のようなスマートフォンにおける表示の特徴や問題点を理解し、今回の調査で示した景品表示法上問題となる場合に該当しないように十分に注意した上で、強調表示と打消し表示とが一体として認識されるように、強調表示に隣接した箇所に打消し表示を表示するとともに、たとえば、強調表示と同じ文脈の中で打消し表示を表示することや、強調表示と打消し表示の文字の色や背景の色を統一すること等が求められる。
     
  5. ② 消費者に求められること
  6.    今回の調査結果は、事業者の表示が景品表示法上問題となる場合等を示している一方、一般消費者がスマートフォンの表示に接する際、特に注意すべき事項を示しているともいえる。スマートフォンの表示において、強調表示を適切に行うことは事業者の責務であるが、消費者においても、スマートフォンで拾い読みをしながら表示に接するリスクを理解し、商品・サービスの購入・申込みを行う際には、購買行動に直接つながらない情報を収集する際とは異なり、強調表示に係る他の重要な情報が表示されていないかどうか意識的に見ることも求められる。

 

《スマートフォンの表示で消費者が特に気を付けて見るべきポイント》

  1. ◯ アコーディオンパネル
  2.    ラベルの表示を見るだけでは、アコーディオンパネルにどのような内容が表示されているのかがわかりにくいことがある。
    → アコーディオンパネルに重要な情報が表示されていないか注意し、ラベルをタップしてアコーディオンパネルの内容を確認すること。
     
  3. ◯ コンバージョンボタン
  4.    打消し表示に注意を向けることなくコンバージョンボタンを見た時点でタップすると、自動でリンク先に移動してしまい、打消し表示を見落とすおそれがある。
    → コンバージョンボタンをタップする際は、リンク元に打消し表示が表示されていないか注意した上で、ボタンをタップすること。
     
  5. ◯ 打消し表示の文字の大きさや色
  6.    スマートフォンでは情報を拾い読みしがちであり、目立たないように表示された打消し表示を見ても、目立つ表示に注意が引きつけられて、打消し表示の内容を認識できないことがある。
    → 気になる強調表示があった際には、隣接した箇所に小さな文字や目立たない文字の色で打消し表示が表示されていないか十分に注意すること。
     
  7. ◯ 強調表示と打消し表示の距離
  8.    縦に長いスマートフォンのWebページでは、下にスクロールしないと表示されない情報を見落としやすく、強調表示から離れたページの下部に表示された打消し表示の内容を認識できないことがある。
    → 気になる強調表示があった際には、打消し表示が表示されていないか注意して、Webページの下部までスクロールすること。

 

 

  1. 消費者庁、「スマートフォンにおける打消し表示に関する実態調査報告書」の公表について(5月16日)
    http://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/#180516
  2. ○「スマートフォンにおける打消し表示に関する実態調査報告書」の公表について
    http://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/pdf/fair_labeling_180516_0001.pdf
  3. ○ スマートフォンにおける打消し表示に関する実態調査報告書
    http://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/pdf/fair_labeling_180516_0002.pdf
  4. ○ スマートフォンにおける打消し表示に関する実態調査報告書(概要)
    http://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/pdf/fair_labeling_180516_0003.pdf
  5. 参考1(スマートフォンにおける打消し表示に関するWebアンケート調査報告書)
    http://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/pdf/fair_labeling_180516_0004.pdf
  6. 参考2(スマートフォンにおける打消し表示に関するグループインタビュー調査報告書)
    http://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/pdf/fair_labeling_180516_0005.pdf
  7. ○ 調査に用いた表示例①の改善例
    http://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/pdf/fair_labeling_180516_0006.pdf
  8.  
  9. 参考
    SH1304 消費者庁、「打消し表示に関する実態調査報告書」を公表(2017/07/25)
    https://www.shojihomu-portal.jp/article?articleId=4083196

 

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