ベトナム:食品安全法に関する政令の改正(1)
長島・大野・常松法律事務所
弁護士 カオ・ミン・ティ
2018年2月2日より、食品安全法(法55/2010/QH12号)の細則を定める政令38/2012/ND-CP号(「旧政令」)を改正する政令15/2018/ND-CP号(「新政令」)が施行されている。9,600万超の人口を抱えるベトナムの食品ビジネスは大きな注目を集めている一方で、食品の安全、衛生、表示に関しては、ベトナムにおいても広範、詳細かつ複雑な規制が存在し、当局の裁量も大きく、さらに消費者の食の安全への意識も高まっているため、法令順守への細心の注意が不可欠である。以下、新政令の改正のうち、実務的に重要なものを2回に分けて紹介することとする。
食製品の事前登録規制の緩和
食品安全法は、包装された加工済み食品、食品添加物及び食品用容器包装等(「食製品等」)は流通前に当局に登録することを義務づけ、登録に関する細則は政令に委ねることとしている(食品安全法12.3条、17.4条、18.3条)。旧政令においては、すべての食製品等は流通前に当局に登録することが必要とされており(旧政令3条)、その登録においては、食製品等の仕様書や安全基準に適合することを示す検査結果等の各種の書面の提出が必要であった。申請から登録完了までの法定期間は、15営業日(サプリメントなどの機能食品等は30営業日)とされていたが、実務上、追加書面の提出を求められることが珍しくなく、法定期間以上に時間を要する事例が少なくなかった。また、登録は保健省のウェブサイトを通して行うが、当該ウェブサイトの使い勝手に問題があることがしばしば指摘されていた。
これに対して、新政令は、サプリメント、医療用食品、36ヵ月未満の小児用栄養食品、及び新規の食品添加物等のみ当局への登録が必要とされ、それ以外の食製品等は、「自己公表」で足りることとなり、手続が大きく簡素化された。「自己公表」は、自己公表フォーム及び安全基準に適合している旨の検査機関による検査結果を、自社の本社やウェブサイト等で公開し、合わせて当局に送付(当局の受理や確認等は、少なくとも明文上は必要とされていない)することのみで完了し、かかる「自己公表」の完了をもって即時に食製品等の生産及び流通が可能とされている(新政令4.1条、5条、6条)。加えて、ベトナムからの輸出用の食品の原料など、ベトナム国内市場で流通しない食品については、登録のみならず上記の「自己公表」も不要である旨が明記された(新政令4.2条)。他方で、新政令においても、上記の通りサプリメント等は引き続き登録が必要だが、提出書類が簡略化された上、申請から登録完了までの法定期間も7営業日(サプリメントは21営業日)に短縮された。
遺伝子組み替え食品の表示規制の緩和
新政令では旧政令と同様に、遺伝子組み替え食品(含有率5%超のもの)はラベルに遺伝子組み換えであることの表示を義務づけられるが(食品安全法44.2条d、旧政令11条、新政令10.1条)、生鮮食品の状態で販売されるなどの場合には表示が不要となった(新政令10.2条)。
(2)につづく