◇SH0113◇インドネシア:インドネシアにおける仲裁(その1) 青木 大(2014/10/22)

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インドネシア:インドネシアにおける仲裁(その1)

長島・大野・常松法律事務所

青 木   大

 仲裁合意において、インドネシア国内を仲裁地とする場合、インドネシア仲裁法(Law No. 30 of 1999)が適用される。この法律はUNCITRALモデル法に準拠したものではなく、以下詳述するようにいくつかの点で特異性が認められる。インドネシアを仲裁地とするアドホック仲裁を仲裁合意において選択した場合には、留意が必要である。

 以下では、インドネシア仲裁法のうち、特異と思われる点を中心に概観する。

(1) 仲裁人の資格(12条)

 仲裁人は以下の条件を満たさなければならない。

  1. ① 法律行為を行う能力又は授権があること
  2. ② 35歳以上
  3. ③ いずれの紛争当事者とも3親等以下の血族・姻族関係がないこと
  4. ④ 仲裁判断に金銭的その他の利益を有さないこと
  5. ⑤ 当該分野に15年以上の経験及び積極的な専門性があること

 仲裁人の忌避要件として、モデル法やICC、SIAC仲裁規則は、独立不偏性という抽象的概念のみを規定している。インドネシア仲裁法は、この独立不偏性の要件(22条1項)に加えて、上記の具体的な仲裁人の資格要件を課している。

 思うに、①及び④は比較的容易に確認できるであろうし、ある程度シニアな仲裁実務家が選任される限り、②及び⑤も基本的には問題になりにくいであろう。③については、当事者が法人の場合、法人に関わるどの範囲の自然人がこの対象となるのかについては、法文上明らかではないため理論上は問題になり得る。取締役の他、コミサリスや株主も対象に含まれる可能性もあるようである。

(2) 仲裁人選任方法(13条~15条)

  1. ① 当事者間に仲裁人の選定に関する合意がない場合は、District CourtのChief Judge(以下「裁判所長」という。)が仲裁人を選定することになる(13条1項)。なお、仲裁人の人数についてはインドネシア仲裁法上デフォルトの定めはなく、人数についても当事者合意がなければ裁判所長の判断に委ねられるものと解される。
  2. ② 当事者間で単独仲裁人の合意がある場合、当該仲裁人について申立人の提案があった後14日以内に両当事者が合意に至らないときは、一方当事者の請求により、裁判所長が単独仲裁人を選定する(14条3項)。
  3. ③ 3人仲裁人の場合、当事者がそれぞれ選定した2人の仲裁人が3人目の仲裁人(仲裁廷の長)を選定する(15条1項、2項)。2人の仲裁人が、双方が選定された後14日以内に3人目の仲裁人について合意できない場合は、一方当事者の請求により、裁判所長がこれを任命する(15条4項)。
  4. ④ 3人仲裁人の場合に、被申立人が仲裁通知受領後30日以内に当事者選定仲裁人を選定しない場合は、申立人が選定した仲裁人が単独仲裁人として手続を行う(15条3項)。

 仲裁人について、一定期間において当事者合意が成立しない限り裁判所がこれを選定するという枠組みは基本的にモデル法と同様である。ただし、3人仲裁人を合意していた場合でも、被申立人が一定期間内に当事者選定仲裁人を選定しない場合には、申立人が選定した仲裁人が単独仲裁人として手続を進める(④)というのは、相当特異な制度といえ、アドホック仲裁において被申立人となる場合には、うっかり期限を徒過してしまうと申立人選任仲裁人のみで手続が進められてしまうという極めて危険な状況が生じることになるため、注意が必要である。

(3) 仲裁判断遅滞の場合の仲裁人の責任(20条)

 仲裁廷が定められた仲裁判断の期限を正当な理由なしに遵守しなかった場合、それによって当事者が被った損害の賠償命令が仲裁人に対して下されることがあるとの規定である。

 モデル法にはこのような規定はなく、これも特異な規定といえる。ただし、実務的には、この規定が発動される事案はあまり多くはないようである。なお、仲裁廷には迅速審理のプレッシャーがかかるものの、当事者にとっては殊更都合の悪い規定とは思われない。

(4) 仲裁言語(28条)

 当事者間の合意及び仲裁廷の同意がない限り、インドネシア語となる。

 モデル法上は、当事者合意がない場合は仲裁廷が判断することになり、若干特異な規定といえる。インドネシア語以外の仲裁言語が望ましい場合は、その旨明確に仲裁合意に規定しておく必要がある(なお、ICC、SIAC仲裁規則による場合は、仲裁言語は当事者合意ない限り仲裁廷の判断に委ねられることになるが、インドネシア言語法上のインドネシア語での契約書作成義務に鑑みて、仲裁地がインドネシアの場合には仲裁廷がインドネシア語を仲裁言語とする可能性も考えられることから、やはり仲裁言語は明確に仲裁合意に規定しておくべきであろう。)。

(次号につづく)

 

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