◇SH2072◇ベトナム:新競争法の改正点の概要(下) カオ・ミン・ティ(2018/09/06)

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ベトナム新競争法の改正点の概要(下)

長島・大野・常松法律事務所

弁護士 カオ・ミン・ティ

 

 前回に続き、現行競争法(27/2004/QH11号)(「現行法」)を全面的に改正する新競争法(23/2018/QH14号)(「新法」)における重要な改正点について概説する。

 

経済集中

 現行法においては、マーケットシェアが50%超になることとなる合併や買収等の企業結合は、原則として禁止されている(現行法18条)。対して新法では、マーケットシェアで形式的に判断されるのではなく、「著しく競争を制限する影響」をもたらしうる企業結合が禁止されることとなる(新法30条)。現行法20条では、30%以上50%以下のマーケットシェアを有することになる場合は、当該企業結合の実施前に競争管理局に届出を行い、確認書を取得しなければならないとされているが、新法では、届出が必要な具体的な基準は法律には明示されず、総資産、総売上、取引価額、マーケットシェアのいずれかを基準として、国家競争委員会が定める基準によるとものとされている(新法33条)。また、企業結合の事前審査においては、初期的審査制度が導入され、初期的審査(新法36条)と正式審査(新法37条)の2段階の審査となる。すなわち、届出後はまず初期的審査がなされ(その結果は届出から30日以内に出される。)、初期的審査の時点で問題がないと判断されれば企業結合の許可を出すことが可能であり、かかる許可が出されない場合は正式審査が開始されることとなっている。

 

リニエンシー制度

 新法112条において、リニエンシー制度(課徴金減免制度)が導入された。すなわち、競争制限的協定の参加者が、競争当局の調査開始決定前に競争当局に自主的に違反行為の報告をし、十分な資料を提出するなどの要件を満たした場合、課徴金の減免を受けることができる。減免を受けられるのは、1番目から3番目までに要件を満たした報告者に限られ、それぞれ100%、60%、40%まで減免を受けることができる。ただし、当該競争制限的協定に主導的な役割を果たした当事者は、減免を受けることができないとされている。なお、日本独禁法の不当な取引制限に係るリニエンシー制度では、1番目から5番目までの報告者が減免の対象となり、報告者の1番目は100%、2番目は50%、3から5番目は30%がそれぞれ減額される(日本独禁法7条の2第10項・11項)。それと比較すると、ベトナムのリニエンシー制度は、4番目以降の報告者や主導的な役割を果たした者は対象外である点で、減免の対象がより限定されているといえる。

 

域外適用

 現行法2条1項では「ベトナムにおいて事業を行う外国事業者」が適用対象に含まれることが明記されているが、新法2条3項ではさらに「国内外の関係機関、組織及び個人」も適用対象に追加されている。これにより、ベトナム競争法が域外適用されうることが明確化された。つまり、例えば、ベトナム国内に拠点がない日本企業であっても、ベトナムへの輸出などに関してベトナム競争法違反行為がある場合は、ベトナム競争法が適用される可能性がある。

以上

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