◇SH2910◇焼津水産化学工業、製品の不正表示を巡り再発防止策を発表――品質保証本部は組織再編成、経営統括本部に法務グループ設置など (2019/11/29)

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焼津水産化学工業、製品の不正表示を巡り再発防止策を発表

――品質保証本部は組織再編成、経営統括本部に法務グループ設置など――

 

 焼津水産化学工業(本社・静岡県焼津市、東証市場第一部上場)は11月18日、今年9月に公表した同社製品の不正表示を巡り、社外の弁護士・有識者で構成した調査委員会による調査結果の概要と再発防止策を発表した。

 同社は1959年設立、資本金36億1千7百万円、連結売上高164億5千8百万円(2019年3月期)、従業員数214人(単体181人、2019年3月末)の魚介類を原料とする天然調味料メーカー大手。取締役の員数は全9名、うち3名を社外取締役(いずれも独立役員)として選任している監査等委員会設置会社であり、監査等委員会は社外2名および社内1名(常勤、委員長)の計3名で構成する。ほか、社外2名・社内2名の指名・報酬委員会を任意で設置しており(委員長は代表取締役社長)、執行役員制度を導入している。

 同社では9月11日、570品目にのぼる全製品について調査したところ同日までに63品目において、製品に加えられていた添加物の表示がなされていないなどの不適切な食品表示が判明したと公表。当該製品に関してはすでに製造・出荷を停止し、顧客へは個別に連絡・対応していることを明らかにするとともに、社外の弁護士および有識者による調査委員会を設置して調査を行っており、社内においても引き続き検証作業を進めていくとした。

 11月18日の発表はこの事態を受けたもので、調査委員会による調査は9月2日~10月30日の間、ア)各種議事録・社内仕様書・品質規格書等の関係資料の精査、イ)工場視察(各工場の作業環境、製造工程、原材料の管理状況等の確認)、ウ)計49名の役職員等に対するヒアリング、エ)全従業員に対するアンケート調査等(回収率96.1%)、オ)製造委託先28社に対する調査により行われたという。調査委員会を構成する委員の詳細については述べられていないものの「法務・食品・コーポレートガバナンスそれぞれに知見を有する弁護士・有識者」とされており、根本原因として、次の6項目が指摘された。a)食品表示の重要性に対する役員、管理職、従業員の理解の欠如、b)法令遵守(コンプライアンス)に対する役員、管理職、従業員の意識の低さ、c)取引先や消費者からの信頼を最優先に考える姿勢の欠如、d)取締役の職責に対する理解・認識不足、e)部門間の情報共有・連携の不足、人員の不足等、f)役員、管理職による現場の実態・従業員の意識の把握不足。

 同社としてはこれらの原因を踏まえて「何よりもまず品質保証体制の強化と製造体制の改善・強化に取り組む必要があるとの認識の下、根本的な要因とも言える企業風土の刷新とコンプライアンス意識の醸成・浸透を図る」とし、再発防止策として、1)コンプライアンス意識の改革と企業統治体制の強化、2)品質保証体制の抜本的見直し、3)製造体制の強化、4)全社的コミュニケーションの活性化といった4項目を掲げたうえで「すみやかに、そして、着実に実行してまいります」と表明している。

 同社内の体制整備に係る具体策をみると、①「リスクマネジメントの強化のため、企業統治体制を見直すとともに、法務担当を設置する」(上記1関係)、②「品質に関するガバナンスを強化するため、外部有識者を含む組織横断的な品質改善会議を設け、全社的な品質保証に関する課題抽出および対策を決定し実行する体制とする」「品質保証本部の組織を再編成し、他部署との連携や監査・監督機能の強化を行う」「品質規格書作成に関するルールや食品表示に対するチェックと責任体制を明確化する」(以上、上記2関係)、③「製造体制を見直し、チーム制で相互補完出来る体制へ変更する」「不良品発生時における責任体制を見直し、工場だけでなく全社で原因究明や対策立案を行う」「各工場に品質保証部門の担当が駐在し、不良品発生を未然に防ぐ方策を練る役割を担うとともに定期的な製造監査を行う」(以上、上記3関係)、④「ヘルプラインについて経営陣から独立した外部通報窓口を設置する」(上記4関係)ものとなっている。

 11月18日付の発表によっては「不正表示事案に対処するため」とする組織変更も別途公表され、ⅰ)品質保証本部内に「品質保全部」「品質監査部」を設置する、社長直轄の「食品表示特命担当」は品質監査部に編入する、ⅱ)経営統括本部内に法務グループを設置するとした。

 なお、2020年3月期の連結業績に与える影響は精査中であり、今年5月10日公表の連結業績予想を見直す必要が生じた場合には適時公表するとしている。

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