タイ:固定資産税法(Land & Building Tax Act)の施行
~徴収の延期~ (下)
長島・大野・常松法律事務所
弁護士 奥 村 友 宏
前回に引き続き、タイにおける固定資産税法につき解説する。
3. 非課税金額
個人が課税対象者となる場合に、課税がなされない控除の対象として、以下の例外が定められている。なお、以下の金額を超える部分については、課税がなされることになる点には留意されたい。
対象物件 | 要件 |
農業用土地及び建物 | 評価価格が5千万バーツを超えない部分 |
住居用土地及び建物 | 所有者の名前が住居登録(house registration book)に1月1日時点で登録されており、かつ、評価価格が5千万バーツを超えない部分 |
住居用建物 | 所有者の名前が住居登録に1月1日時点で登録されており、かつ、評価価格が1千万バーツを超えない部分 |
4. 罰金
固定資産税を支払期限までに支払うことを怠ると、固定資産税額の40%の罰金が課される。但し、以下の場合には、その罰金額が減額されることとなっている。
地方当局から催促状が発行される以前に固定資産税を支払う場合:固定資産税額の10%
催促状発行後、督促状記載の支払期限までに固定資産税を支払う場合:固定資産税額の20%
また、追徴罰として、支払期限から1ヶ月遅れる毎に固定資産税額の1%が課されることとなっている。但し、支払いが遅れる場合でも地方当局による支払猶予が付与された場合には、この追徴罰は0.5%となる。
5. 徴収を含む諸手続の延期
2019年12月、タイ内務省は、関連当局が十分なデータの収集と正確な課税分析を行うことを目的として、情報収集と分析を行うに必要な時間を十分に確保するために固定資産税の諸手続の延期について発表を行った。主要な延期内容は以下のとおりである。
延期項目 | 延期の内容 |
固定資産税の対象不動産に関する通知 | 2019年11月中→2020年3月中 |
固定資産税の徴収に関する公表(評価価格、課税レート等) | 2020年2月1日以前→2020年6月1日以前 |
固定資産税の課税対象者への通知 | 2020年2月中→2020年6月中 |
固定資産税の徴収時期 | 2020年4月中→2020年8月中 |
いずれも上記時期について、延期が行われることとなっているものの、2020年から課税がなされるという点には、変わりがないため、課税対象者としては引き続き動向を注視する必要がある。
6. 固定資産税に対する今後の対応
固定資産税法の施行に伴い、課税対象者はもちろんであるが、今後、不動産関連取引を行う場合にも留意が必要である。すなわち、年度の途中で不動産の取引を行う場合、譲渡人が固定資産税に関する課税対象者となるが、譲受人が当該年度について一切固定資産税を負担しないこととすると、不公平が生じると考えられる場合がある。その観点から、譲渡時期に応じて、譲渡人及び譲受人との間での負担の取り決めを行うといった対応をタイにおいても行っていく必要があろう。
その他、実際に固定資産税の課税・徴収が始まり、実務の運用において現時点で想定されない問題・課題が生じてくることも想定されるため、タイにおいて不動産を取り扱う場合には、タイにおけるタックスアドバイザーその他専門家の見解を確認しつつ、取り扱いについて留意することが必要である。