◇SH0214◇中国:【重要法令情報】外国投資法(パブコメ版)の公布(その2) 川合正倫(2015/02/10)

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中国:【重要法令情報】外国投資法(パブコメ版)の公布(その2)

長島・大野・常松法律事務所

弁護士 川 合 正 倫

 商務部は、2015年1月19日に「外国投資法」の草案を公布した。外国投資法は、外資三法をはじめとする外国資本による中国への投資に関する規定を整備統合した新たな法令である。外商投資企業の根拠法である外資三法(外資企業法、中外合弁企業法、中外合作経営企業法)は外国投資法の施行後に廃止されることになるため、各企業は対応が必要となる。

 前稿では、外国投資法に関する重要ポイントして以下の事項を紹介した。

1.外国投資に関する規定が一本化された重要法令

2.外資三法の廃止に伴う対応

3.ネガティブリスト制の採用・事前審査制から事後報告制へ移行

 本稿では、新たに明確された「外国投資者」「外国投資」の定義について紹介する。

「外国投資者」の定義に実質基準を導入

 外国投資法(パブコメ版)では、「外国投資者」について実質基準を導入している。具体的には、外国投資者が支配する国内企業は外国投資者として扱われ、他方で中国投資者が支配する外国企業による中国国内への投資が中国投資者による投資として処理されうることになる。

「外国投資」の明確化:契約による支配も外国投資に該当

 「外国投資」の定義も明確化され、持分の投資だけではなく、長期(一年以上)の融資のほか、契約を用いた国内企業のコントロール又は権益の取得といった形態も含まれる。契約を通じて他の企業の経営等に決定的な影響を及ぼす形態が外国投資の範囲に含まれることが明確にされたことを受け、既存のVIEスキームによる投資の取扱いについて関心が高まっている。

 VIEスキームとは、外国資本の導入が禁止又は制限されている分野(金融や教育等)への投資手段として、実務上使用されている投資スキームであり、典型的には、外国の投資家が海外(ケイマン等)に投資のための特別目的会社(SPC)を設立し、当該SPCが中国で100%出資の子会社を設立する。この中国子会社は、当該事業に関して許認可を有する中国の内資会社との間で締結する各種契約を通じて事業をコントロールし、内資会社の利益は最終的にSPCを通じて外国投資家に還元される。

 上記のようなVIEスキームでは各種の契約を通じて、外国投資家が中国の内資会社をコントロールするため、外国投資法のもとでは「外国投資」に該当することになる。他方、外国での資金調達のためにVIEスキームが使われている場合などで中国人が実質的に支配しているとみられる場合は「外国投資」には該当しないとの見解も示されている。この点について外国投資法の施行後にどのように処理を行うかという点については、パブリックコメント版に寄せられた意見等を踏まえさらなる検討が行われることになっている。

まとめ

 以上、外国投資法のパブコメ版のエッセンスを紹介した。公表された内容は、日本や欧米等の先進国の外資規制を参考にして作成されたものと思われる。草案と同時に公表された商務部の説明文においても「政府機能の転換」が強調されており、事前規制から事後監督への転換が明確に示されている。外国投資法は中国における外国資本による投資の基礎となる法律であり、実務に大きなインパクトを与えるため、中国事業の関係者は引き続き改正の動向に注意する必要がある。

 

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