2020年3月18日号
インドネシア:新型コロナウイルスの影響まとめ(速報)
長島・大野・常松法律事務所
弁護士 福 井 信 雄
はじめに
欧米における急速な渡航制限・行動制限の拡大に伴い、新型コロナウイルスの国内外における事業活動への影響が一層深刻化してきています。感染拡大に伴う国内の各種法律問題に加え、海外に子会社・関係会社を抱える企業からの問い合わせも増えているため、当事務所の海外オフィスと連携して速報ベースで各国の方針や影響拡大状況の概要につきお知らせ致します。なお、本ニュースレターは感染拡大が続く間、不定期に配信していきたいと思いますが、同感染症の拡大状況については日々状況が変化している中、本ニュースレターの内容がその後変更・更新されている可能性については十分ご留意の上参照ください。本ニュースレターの内容は、特段記載のない限り、2020年3月17日夜時点で判明している情報に基づいています。
全体概況 死亡者:5人、感染者数(累計):172人(3月17日現在) 2月上旬には法務人権大臣令を制定して緊急措置として中国人及び中国への渡航歴のある外国人の入国禁止措置を、3月8日からはイラン、イタリア、韓国へ直近14日以内に渡航歴のある外国人旅行者に対する入国禁止措置を追加で発動したが、引き続き感染者が急増しつつある状況を踏まえ、3月20日以降、事前に健康証明書を提出してビザの取得をしない限り、外国人の入国を全て禁止する追加措置がとられる。3月15日には、ジョコウィ大統領及びジャカルタ州知事の声明が出され、公務員及び民間企業での自宅勤務の導入やジャカルタ州内全ての学校の2週間休校などの感染拡大防止のための措置が国内でも実施されている。 |
主な政府発表
- ・ 法務人権大臣令2020年第3号(2020年2月5日制定)に基づく中国人及び中国への渡航歴のある外国人へのビザ発給の一時停止
- ・ ジョコウィ大統領によるインドネシア初の国内感染事例に関する声明(3月2日)
- ・ ジョコウィ大統領による新型コロナウイルス拡大防止に向けての声明(3月15日)
渡航情報
- ・ 中国人及び中国に渡航歴がある外国人の入国は禁止している。
- ・ 3月8日以降、イラン、イタリア、韓国へ直近14日以内に渡航歴のある外国人旅行者に対する入国が禁止されている。(この措置に関する根拠法令は未施行)。
- ・ 日本への渡航及び日本からシンガポールへの入国については現状制限されていない。
- ・ 3月2日のジョコウィ大統領の声明のなかで、日本人からの感染を示唆する発言があったことから、在留日本人に対する嫌がらせ行為等が起きており、大使館が相談窓口を設置するなどして対応にあたっている。
- ・ 外国人出張者の多くはインドネシアの空港到着後に取得できる到着ビザ(Visa On Arrival)を取得して入国していると思われるが、当面1ヶ月間はこの到着ビザの発給が停止される。事前に大使館でビザを申請する場合、日本やシンガポールのインドネシア大使館では申請から3営業日でビザが発給されることになっているが、現在の状況下ではさらに追加の日数を要する可能性があることから、日数に余裕を持って申請することが望ましい。
その他
- ・ インドネシア金融庁は、3月9日付で「自社株買いが許容される市況への重大な変動を与えるその他の事由」に関する回状(Circular Letter)を発行し、今回のコロナウイルスの拡散が市況への重大な変動を与える事由に該当するとの解釈を明らかにした。インドネシアの上場会社に関しては、一定の市況への重大な変動を与える事由が生じた場合に、本来必要な株主総会の決議無しに一定限度の自社株買いを許容する金融庁規則が2013年に施行されているところ、今回の回状により、現在の状況下で同規則の適用を受けられることが明確化され、より機動的な自社株買いが可能であることが確認された。市場での株価の下落が著しい現状において、上場会社の資本政策の選択肢が広がる措置と評価できる。
- ・ 感染拡大の目的で、インドネシアへの投資を主管する投資調整庁の窓口が3月17日より3月末までサービスを一時停止することを発表した。オンラインでの手続は引き続き可能である。
(ふくい・のぶお)
2001年 東京大学法学部卒業。 2003年 弁護士登録(第一東京弁護士会)。 2009年 Duke University School of Law卒業(LL.M. )。 2009年~2010年 Haynes and Boone LLP(Dallas)勤務。
2010年~2013年10月 Widyawan & Partners(Jakarta)勤務。 2013年11月~長島・大野・常松法律事務所 シンガポール・オフィス勤務。 現在はシンガポールを拠点とし、インドネシアを中心とする東南アジア各国への日本企業の事業進出や現地企業の買収、既進出企業の現地でのオペレーションに伴う法務アドバイスを行っている。
長島・大野・常松法律事務所 http://www.noandt.com/
長島・大野・常松法律事務所は、約500名の弁護士が所属する日本有数の総合法律事務所です。企業法務におけるあらゆる分野のリーガルサービスをワンストップで提供し、国内案件及び国際案件の双方に豊富な経験と実績を有しています。
当事務所は、東京、ニューヨーク、シンガポール、バンコク、ホーチミン、ハノイ及び上海にオフィスを構えるほか、ジャカルタに現地デスクを設け、北京にも弁護士を派遣しています。また、東京オフィス内には、日本企業によるアジア地域への進出や業務展開を支援する「アジアプラクティスグループ(APG)」及び「中国プラクティスグループ(CPG)」が組織されています。当事務所は、国内外の拠点で執務する弁護士が緊密な連携を図り、更に現地の有力な法律事務所との提携及び協力関係も活かして、特定の国・地域に限定されない総合的なリーガルサービスを提供しています。
詳しくは、こちらをご覧ください。