◇SH0025◇公取委、ヒマラヤ等に下請法違反による勧告を行う 唐澤 新(2014/07/08)

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公取委、ヒマラヤ等に対する下請法違反による勧告について公表

岩田合同法律事務所

 弁護士 唐 澤   新

 

 公正取引委員会は、平成26年6月27日、岐阜市に本社を置く大手スポーツ用品販売会社ヒマラヤに対し、下請業者に支払う代金を減額し、また在庫品を引き取らせるなどの下請代金支払遅延等防止法(下請法)に違反する行為が認められたとして、同社に対し再発防止の社内体制の構築等の勧告を行った。

 下請法では、親事業者が下請事業者に物品の製造、役務の提供等を委託する場合、商品の受領拒否や代金の支払遅延・減額等下請事業者に不利益が生じる行為をすることが禁止されている(同法4条)。そして、公取委は、違反を認めた場合には、違反行為の差止め、原状回復・不利益補填、再発防止措置の整備、関係者への周知等を内容とする勧告を行う(同法7条)。勧告は、行政処分ではなく法的拘束力のない行政指導であるが、勧告に従った場合には、当該違反行為に関して独禁法上の優越的地位濫用規制等は適用されないので(同法8条)、事業者には勧告に従う強いインセンティブがある。

 親事業者の禁止事項

(ア) 受領拒否の禁止(第4条第1項第1号)
(イ) 下請代金の支払遅延の禁止(第4条第1項第2号)
(ウ) 下請代金の減額の禁止(第4条第1項第3号)
(エ) 返品の禁止(第4条第1項第4号)
(オ) 買いたたきの禁止(第4条第1項第5号)
(カ) 購入・利用強制の禁止(第4条第1項第6号)
(キ) 報復措置の禁止(第4条第1項第7号)
(ク) 有償支給原材料等の対価の早期決済の禁止(第4条第2項第1号)
(ケ) 割引困難な手形の交付の禁止(第4条第2項第2号)
(コ) 不当な経済上の利益の提供要請の禁止(第4条第2項第3号)

 

 公表された公取委の勧告等によれば、ヒマラヤは、自社の店舗で販売するプライベートブランド商品の製造を下請業者に委託していたが、平成24年から平成25年にかけて、①店頭に在庫として残った商品の下請代金を「クリアランス」として値引きし、また「オンライン利用料」として下請代金から一定額を差し引くなどして、下請業者45名に支払うべき下請代金のうち総額約2000万円を不当に減額し、②販売期間が終了したことを理由として総額約8000万円分の在庫商品を下請業者2名に引き取らせていた。(なお、同社は、公取委の勧告の前に、すでに減額した代金を支払い、返品した商品を再度買い取る等している。)

 また、公取委は、平成26年6月27日、パチンコ遊技機の部品製造会社森創に対して、同月30日には福岡等でスーパーマーケットを展開するサンリブに対して、下請事業者に支払うべき代金を減額したとして同様の勧告を行っている。(それぞれの不当な利得額は、約5000万円、約6500万である。)

 下請法4条違反に対する公取委のエンフォースメントは、勧告にとどまり、課徴金等の金銭的なペナルティーはないが、公取委は、下請法違反の取締りについて積極的な動きを見せており(指導件数は年々増加しており、勧告件数は近年では二桁台で推移している。[1])、勧告の公表によるレピュテーションの低下も避けられないので、従業員に対する研修を行うなど下請法違反の事実が生じないような体制を整備しておくことが事業者にとっては不可欠である。

以上



[1] 公取委公表「平成25年度における下請法の運用状況及び企業間取引の公正化への取組」
  http://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/h26/jun/140604.html

 

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