◇SH0036◇消費者庁、消費者機構日本と株式会社東急スポーツオアシスとの裁判外の和解について公表  土門高志(2014/07/17)

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消費者庁による消費者機構日本と株式会社東急スポーツオアシスとの裁判外の和解についての公表

岩田合同法律事務所

 弁護士 土門高志

 消費者庁は、平成26年7月1日、適格消費者団体である特定非営利活動法人消費者機構日本(以下「消費者機構日本」という。)とフィットネスクラブ等の経営を行う株式会社東急スポーツオアシス(以下「オアシス」という。)との間で成立した裁判外の和解について、その概要等を公表した。

 消費者機構日本は、消費者の利益のために差止請求権を行使するのに必要な適格性を有する消費者団体として、消費者契約法(以下「法」ともいう。)13条に基づく認定を受けた適格消費者団体であり、オアシスに対し、同社における消費者契約法上の問題点等について平成25年中に申入れ及び問い合せを行っていたものである。適格消費者団体は、差止請求に係る裁判外の和解が成立した時には、当該和解の内容等を内閣総理大臣[1]に報告しなければならず(法23条4項9号)、内閣総理大臣は、速やかに報告された和解の概要等を公表しなければならないとされており(法39条)、本件に係る公表は、当該法の定めに基づいて行われたものである。

 消費者庁の公表資料によれば、消費者機構日本による申入れ及び問い合せの内容並びに和解合意書における関連する合意事項は、大要以下のとおりである。

申入れ又は問い合せ事項

和解合意書における合意事項

1.  オアシスの施設利用規程中、会員は施設内において自己及び自己の所有物を自らの責任において管理するものとし、オアシスは施設内で発生した盗難・傷害その他の事故についてオアシスに重大な過失がある場合を除き、一切の賠償責任を負わないと規定する条項の削除、また、その旨の意思表示を行わないこと。

オアシスが左記の意思表示を行わないことが合意された。

2.  オアシスの施設利用規程中、施設の営業が不可能又は著しく困難になった場合、施設の全部又は一部を閉鎖し、又は施設の利用を制限することができることとした上で、同時に全ての会員との契約を解除することができることとし、この場合、会員は名目の如何を問わず、損害賠償責任等の異議を申し立てることができないと規定する条項の改定。

オアシスの施設の全部若しくは一部を閉鎖し、又は、施設の全部若しくは一部の利用制限をする場合には、その原因がオアシスの責に帰するものであると否とを問わず、閉鎖若しくは利用制限期間に応じて既払い会費を返還し、又は、会費を減免する等、消費者の利益に配慮した措置を講ずることが合意された。

3.  オアシスの施設利用規程中、入会金、会費、利用料等を社会・経済情勢の変動を勘案して改定することができると規定する条項の改定。

オアシスが施設利用規程その他諸規定を改定する場合には、消費者に対し、改定事項の重要度に応じて、充分な周知期間を設けたり、事前に書面を交付したりするなどして、消費者が契約を継続するか否かを判断する機会を与えることとする等、消費者にとって不意打ちとならないような措置を講ずることが合意された。

4.  オアシスの施設利用規程中、規程等を改正する際に、重要な案件については、会員に通知するものとし、軽微な案件については各施設に提示するものと規定する条項の改定。

 

 上記1から4に記載の施設利用規程の条項は、他社の同種利用規程においても散見されるものの、とりわけ上記1の条項(会員は施設内において自己及び自己の所有物を自らの責任において管理するものとし、オアシスは施設内で発生した盗難・傷害その他の事故についてオアシスに重大な過失がある場合を除き、一切の賠償責任を負わないとする条項)は、消費者機構日本において、法8条1項1号(事業者による債務不履行責任の全部免除)及び3号(事業者による不法行為責任の全部免除)に該当し、無効になる旨の指摘がなされていたこと[2]が注目に値する。また、消費者機構日本は、オアシス以外にも、複数の他のスポーツクラブ運営会社宛に同様の指摘を行っており、消費者機構日本のホームページ上において協議の結果が公表されている、例えば、株式会社ティップネス、株式会社THINKフィット、セントラルスポーツ株式会社、スポーツクラブNAS株式会社及び株式会社コナミスポーツ&ライフは、いずれも上記1と同様の指摘を受け入れ、利用規程等の改定を行っている[3]

 現在、主として協議の対象となっているのはスポーツクラブ運営会社における利用規程等についてであるが、他業種の事業者においても、その運営施設の利用規程等に上記1と同旨の規定を有し、消費者を顧客としている者については、当該規定の変更も検討に値しよう。また、そのような事業者が、今後新たに利用規程等を作成する際にも、上記1に関する消費者機構日本の指摘及び上記2から4に関する和解内容は参考になると考えられる。

以上



[1] 法48条の2により、法第3章の規定による内閣総理大臣の権限は消費者庁長官に委任されている。

[2] 消費者機構日本がオアシスに宛てた平成25年7月31日付申入れ及び問い合せ

 (http://www.coj.gr.jp/zesei/pdf/topic_140520_01_01.pdf

(どもん・たかし)

岩田合同法律事務所アソシエイト。2004年東北大学法学部卒業。2006年弁護士登録(59期)。2012年Northwestern University School of Law修了(LL.M.)。主な取扱分野は、ファイナンス取引、渉外取引全般、及び独禁法関連事件等。

 

岩田合同法律事務所 http://www.iwatagodo.com/

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1902年、故岩田宙造弁護士(後に司法大臣、貴族院議員、日本弁護士連合会会長等を歴任)により創立。爾来、一貫して企業法務の分野を歩んできた、我が国において最も歴史ある法律事務所の一つ。設立当初より、政府系銀行、都市銀行、地方銀行、信託銀行、地域金融機関、保険会社、金融商品取引業者、商社、電力会社、重電機メーカー、素材メーカー、印刷、製紙、不動産、建設、食品会社等、我が国の代表的な企業等の法律顧問として、多数の企業法務案件に関与している。

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