インドネシア:日本人観光客に対するビザ免除
長島・大野・常松法律事務所
弁護士 前 川 陽 一
ビザの免除に関する大統領令2015年第69号に基づき、日本を含む30か国の国民がインドネシアを観光目的で訪問する場合についてビザの取得が不要となった。同大統領令は、2015年6月12日から運用が開始されている。
従前、日本人観光客がインドネシアに入国するためには、到着ビザ(Visa On Arrival、VOA)を到着空港の窓口で購入した上で入国審査カウンターに進む必要があった。そのため、世界各地からの観光客が集中するハイシーズンには、VOAと入国審査の両方のカウンター前で長い行列が生じていた。同大統領令により、免除対象となった国の国民は、30日以内の観光目的での滞在に限り、ビザを取得する必要がなくなったものである。ただし、ビザ免除の対象は、現時点では以下の空港又は海港のいずれかからインドネシアに入国する場合に限られている。
スカルノ・ハッタ国際空港(ジャカルタ近郊、タンゲラン)
ジュアンダ国際空港(スラバヤ)
ングラライ国際空港(バリ、デンパサール)
クアラナム国際空港(メダン)
ハン・ナディム国際空港(バタム島)
スリ・ビンタン・プラ港(タンジュン・ピナン)
バタム・センター港(バタム島)
セクパン港(バタム島)
タンジュン・ウバン港(タンジュン・ウバン)
現時点では、上記空港・海港から入国した場合であっても、上記空港・海港以外の場所から出国する場合にはビザ免除の対象とはならず、ビザ免除を受けて入国した場合には上記空港・海港のいずれかから出国する必要がある。
ビザ免除を受けて入国した場合、滞在期間は延長することができず、また滞在期間中にVOAなどに切り替えることはできない。したがって、観光目的であっても31日以上滞在する場合には、VOAを取得して入国し、入国後に入国管理局で滞在期間を延長する必要がある。VOAの延長は1回のみ認められるから、最長で60日間滞在することができる。親族訪問や就労を伴わない商用(会議への出席等)のための滞在はビザ免除の対象とならず、VOAその他の滞在目的に適合したビザを取得する必要がある。
運用開始当初は現場において若干の混乱があり、観光目的以外の入国としてVOAを取得したにもかかわらずパスポートにVOAが貼付されなかったり、ビザ免除の入国印がされたりなどのトラブルが報告された。滞在目的に適合したビザと入国印が付されているか入国審査カウンター通過の際には常に確認するようにしたい。
現地報道によれば、インドネシア政府は最近、ビザ免除の対象をさらに47の国と地域からの観光客にも拡張する計画を発表したとのことである。ビザ免除により外国人観光客を積極的に呼び込もうとするものである。他方で、ビザ免除による観光客増加への影響は限定的であり、国内のインフラ整備や観光資源の開発を進めるべきとの冷ややかな意見も聞かれる。