法のかたち-所有と不法行為
第六話 フランス中世以来の土地の利用関係
法学博士 (東北大学)
平 井 進
4 ポティエの二重所有権の構成
ポティエの封建関係に関する土地所有権論は、前述の「分割所有権」概念を用いたものである。その法的構成は、本来の所有権であるdomaine de propriétéの権利について、これが下位者に移転(aliénation)されて下位者の所有権(domaine utile)となり、この権利は土地の果実を取得し、任意に管理するように実益あるものをすべて含むとする。上位者がもつ所有権(domaine direct)は、上記のdomaine de propriétéから切離され、その優越的な地位を示すdomaine de supérioritéといわれるものであって、領主であることを認めさせ、地租や役務等を求める権利をもつものとする。[1]
ポティエの上記の説明は、下位者の所有権が本来の所有権であると言おうとしているのであるが、所有権が移転されたとする根拠が明らかでなく、また下位者が土地を任意に管理するといっても、実際にはその土地を(上位者から買取ることを含めて)自由にはできなかったのであるから、管理権能があるとすることにどのような意味があるのかという問題がある。これは、前述の重農主義的な思考を法技術的に構成しようとする試みであったと思われるが、所有権を二重に構成すること自体に存する本質的な問題であり、成功しているようには見えない。
[1] Cf. Pothier, supra, Sec. 2-4, pp. 101-103. 片岡(三)・前掲, 417-419頁、関口晃「フランス近世私法に関する一試論」法制史研究, 14別冊『法典編纂史の基本的諸問題 近代』(1963) 103, 123-124頁も参照。