インドネシア:API-P保有者による完成品輸入に関する工業大臣令の施行
長島・大野・常松法律事務所
弁護士 坂 下 大
インドネシアにおける輸入業者番号(API)制度に関する2015年の一連の改正において、API-P保有者による完成品の輸入及び販売が、紆余曲折を経て結局一定の範囲で容認されることになったことは記憶に新しい。(これら2015年の一連の改正に関する詳細は、拙稿「輸入業者番号(API)に関する商業大臣令の改正」及び前川陽一弁護士による「輸入ライセンス規制の改正―製造業者による完成品輸入の例外を認める規定の復活」を参照されたい。)かかるAPI-P保有者による完成品の輸入及び販売を認める規定は、補完財、試験製品、及びアフターサービス用品の輸入に関する商業大臣令(2015年第118号、以下「本商業大臣令」という。)によって設けられた(実質的に復活された)ものであるが、本商業大臣令において、一定の項目については、別途担当大臣において詳細を定めるとされていたところである。これを受けて、インドネシア工業省は、先般、補完財、試験製品、及びアフターサービス用品の輸入推薦状付与の規則に関する工業大臣令(2016年第19号、以下「本工業大臣令」という。)を制定した。本工業大臣令は本年3月22日から施行されている。以下、本工業大臣令の概要について説明する。
1. 輸入が認められる完成品の数量及び期間の限定
API-P保有者が完成品を輸入するためには、商業大臣による輸入許可(Persetujuan Impor)を取得する必要があるが(本商業大臣令7条1項、本工業大臣令6条1項)、本工業大臣令において、かかる輸入許可は数量及び期間を限定して付与されるべき旨が定められており(本工業大臣令6条2項)、さらにその別表において、補完財、試験製品、及びアフターサービス用品のカテゴリごとに、産業セクター別の具体的な制限の内容が定められている。(例えば、数量については「過去の生産実績のX%」という具合である。試験製品については、さらに1~3年の期間制限が産業セクターごとに設けられている。)
2. 推薦状の申請手続
API-P保有者が、完成品を輸入するための商業大臣による輸入許可(Persetujuan Impor)を申請するためには、担当大臣(工業大臣)の推薦状を取得し添付する必要がある(本商業大臣令8条d、本工業大臣令7条1項)。推薦状の申請に際しては以下の資料を工業育成総局長に提出する必要がある(本工業大臣令8条)。
- ⑴ 事業許可、納税者番号(NPWP)、及びAPI-Pの写し
- ⑵ 補完財の輸入の場合は、輸出者等と輸入者(API-P保有者)の間の「特別な関係」を証明する資料(一定の契約関係や株式保有関係を証明するもの):本商業大臣令及び本工業大臣令において、API-P保有者において補完財の輸入が認められるためには、輸出者等と輸入者(API-P保有者)の間に「特別な関係」があることが必要とされているためである。
- ⑶ 試験製品の輸入の場合は、インドネシアにおける事業及び投資に係る開発計画
工業育成総局長は、工業大臣の委任を受けて、推薦状を発行するか否かについての裁量を有するところ(本工業大臣令7条2項、9条1項)、推薦状を発行する場合には、適式な申請の受理から5営業日以内にこれを行い(本工業大臣令9条2項)、発行の申請を却下する場合は、申請から5営業日以内に理由を付してこれを行うこととされている(本工業大臣令9条3項)。推薦状の発行の申請はオンラインで行うことができる(本工業大臣令10条1項)。また、推薦状を取得したAPI-P保有者は、実際の輸入の有無にかかわらず、輸入の実施に係る報告書を四半期ごとにオンラインで工業育成総局長に提出する必要がある(本工業大臣令11条)。