インドネシア:マルチプル・ビザの有効期間を5年に延長
長島・大野・常松法律事務所
弁護士 前 川 陽 一
2016年6月28日、入国管理法の施行に関する政令2013年第31号を改正する政令2016年第26号(以下「本改正令」という。)が制定され、いわゆるマルチプル・ビザの有効期間が従来の1年間から5年間に延長される改正がなされた。
マルチプル・ビザは、1回の滞在期間を最長60日とし(延長不可)、有効期間内において何度でも入出国が可能なビザである。一般に「マルチプル・ビジネス・ビザ」あるいは「数次訪問ビザ」などの名称が用いられることがあるほか、そのインデックス番号から「212」と呼ばれることもある。「訪問ビザ」のカテゴリーには、1回の出入国に限られるが原則60日間の滞在期間が延長可能な「シングル・ビザ」(インデックス番号211)もあるが、入出国回数の制限や連続滞在期間延長の可否などでマルチプル・ビザとは区別される。インドネシアの到着空港窓口において取得する「到着ビザ」と異なり、インドネシア大使館において事前に取得の手続を経る必要がある。
現時点で有効な入国管理局の通達(2015年12月7日付)によれば、マルチプル・ビザにより可能な活動は次のとおりである。
- a. 観光
- b. 家族訪問
- c. 社会活動
- d. 政府の任務
- e. 商談
- f. 物品の購入
- g. 講演又はセミナー参加
- h. 国際展示会の参加
- i. インドネシアの本社・駐在員事務所での会議出席
- j. 他国への渡航のための立寄り
「ビジネス・ビザ」という呼称が一般に通用していることから誤解が生じているケースも見聞するが、マルチプル・ビザ所持者は就労活動を行うことはできない。ここで「就労」の内容が明確にされていないことから、マルチプル・ビザで許容される就労を伴わない商業的活動との線引きが問題となるが、例えば現地法人の工場の作業現場への立入りは当局による取締りの対象となるおそれもあることから避けるべきと言われている。
インドネシア政府は、今回の改正について外国人の訪問査証に関する国際的な傾向に沿ったものと解説している。今回の改正により上記の目的で頻繁にインドネシアに渡航する必要がある者の利便性が高まる効果が期待される。
本改正令は2016年6月28日から施行されている。