◇SH0760◇中国:整理――中国外商投資企業の借入れについて 若江 悠(2016/08/10)

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中国:整理――中国外商投資企業の借入れについて

長島・大野・常松法律事務所

弁護士 若 江   悠

 

 外国投資家を株主とする外商投資企業の主要な資金調達手段は、中国外又は中国内からの借入れであるが、この分野については近時、新制度の導入や司法解釈の変更により大きな動きが生じているため、整理しておきたい。

 まず、前提として、中国法上、外商投資企業の借入可能額は、投資総額と登録資本との差額(「投注差」とも呼ばれる。)を超えることはできないとされている。ただし、実務上は、中国国内の金融機関からの借入れについては、投注差を超えているか否かが必ず確認される制度とはなっていない。他方、中国国外(例えば日本の親会社)からの借入れについては、中国法上の「外債」に該当し、外債登記が義務付けられるため、以下に記載するマクロプルーデンス管理モデルを選択しない限り、中長期外債累計発生額及び短期外債残高の合計が投注差を超えないことが要求される。なお、中長期外債とは1年を超える借入れで、短期外債とは1年以内の借入れをいう。

 

(1) 外債

 外債は、国内機構(中国国内において法に従い設立した企業その他の組織等)が非居住者(中国国外の金融機関、企業、自然人等)に対して負担する外貨により表示される債務と定義されている。

 外貨を借り入れる場合、借入契約を締結した後15日以内に、債務者は外貨管理局で外債登記を行わなければならない。かかる登記により貸付金を振り込むための専用外貨口座が開設可能になり、また、債権者に対する返済のための対外送金は外債登記に基づいて行われる。

 従来、外債借入については、外商投資企業については上記のとおり投注差を上限とする管理(以下「投注差管理モデル」という。)が行われており、国内資本企業による外債借入は基本的に個別の認可を必要としていた。この点、2016年以降、自由貿易試験区内の企業は、クロスボーダーの資金調達に関して、主に各企業の純資産額を基礎に資金調達の上限額を計算するマクロプルーデンス管理モデルを選択することが可能となり、さらに、2016年5月には不動産業等の一部の企業を除き、全国の全ての企業について、マクロプルーデンス管理モデルを選択できるものとする人民銀行の通達が発せられた。当該モデルのもとでは、外債の(累計発生額ではなく)残高が所定の上限額以下であればよい(したがって、外債を返済することにより外債の借入枠が「復活」する)ものとされる。新制度の詳細については、外貨管理局が別途定めることとされている。

 また、外貨管理局の2016年6月付の新通達により、自由貿易試験区で試行実施されている外債資金の自由元転措置が全国展開されることになっている。これまで禁止されていた元転後資金の使途のうち、委託貸付の実行を関連企業間に限って解禁しているほか、借入金の返済も認めている。

 

(2) 国内の借入れ

 中国国内の借入れは、金融機関からの借入れが主たる方法である。

 従来、銀行以外の一般企業から直接借り入れることは中国法上禁止されていたため、企業間の資金融通の目的でいわゆる「委託貸付」の方法が広く利用されていた。委託貸付においては、貸し手企業と借り手企業、銀行の三者間で契約を締結し、貸し手企業が銀行に貸付原資を預け、銀行は貸し手企業の委託に基づき借り手企業に対し金銭を貸し付け、その貸付期間、金利等の条件は双方の企業間で決定し銀行はコミッションのみを受け取るというアレンジがとられていた。

 もっとも、2015年に新たに公布された最高人民法院の司法解釈において、企業間貸付契約の効力を一定の条件のもとに肯定することが明らかにされた。このため、生産・経営の需要に基づく場合等には、上記委託貸付の方法によらずとも企業間で直接資金貸付が実行可能となったと考えられている。

 

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